国内「第3波」とされる新型コロナウイルス感染症の流行が広がる中、県内でも毎年インフルエンザの流行が勢いづく冬が近づいてきた。懸念される同時流行はあるのか。医師は「二つのウイルスが狙うターゲット(罹患(りかん)者層)は重なるため、可能性は低い」と予測しつつ、感染予防の徹底を呼び掛ける。(社会部・下地由実子)
13日午前、那覇市松川の首里城下町クリニック第一。処置室には絶え間なく患者が呼ばれ、看護師がインフルエンザワクチンの予防接種を打っていた。「新型コロナが心配なので今年は受けました」。持病のために定期通院しているという女性(85)は不安げにつぶやいた。
ワクチン接種の開始は10月から。那覇市が65歳以上を対象に費用を助成している影響もあって希望者は多く、同院では1日約30人が接種を受ける。ワクチンは例年の1・5倍の1660人分を確保したが、既に残りは100人分を切り、来週にも底を突く。田名毅院長は「開業19年で、これだけワクチンが枯渇したのは2009年の新型インフル以来だ」と目を丸くする。
では、新型コロナとインフルエンザは同時に流行するのだろうか。
県立中部病院感染症内科の椎木創一医師は「ふたを開けてみないと分からない」と前置きしながらも、「新型コロナが流行している間は、インフルはあまり流行しないのではないか」とみる。理由は、新型コロナのためにしている予防対策がインフル予防にもなる上、「二つのウイルスの性質がかぶるから」。
新型コロナの罹患は小学生以下が2~3%と少なく、主に成人が多い。インフルは乳幼児から高齢者まで幅広く、両ウイルスは成人を対象にする点で共通する。症状も発熱など風邪に似ている。椎木医師は「理由は分からないが、これまでターゲットの重なるウイルスが同じ勢いで流行した経験はない」と説明する。
反対に、ターゲットのかぶらないウイルスなら同時流行する可能性はあるという。例えば、新型コロナが感染拡大する現在、主に乳幼児がかかる「RSウイルス感染症(RSV)」について、県は「異例の流行」と注意を呼び掛けている。
椎木医師は「悪く言えば、新型コロナが下火になってきたら、インフルが入れ替わりで流行することはあるかもしれない」と話す。
いずれにしろ予防策の徹底は必須。田名医師は「新型コロナ以外の病気を予防することが、患者の負担を軽くし、病院の診療をスムーズにすることにつながる」と強調した。