社説

社説[民主派議員排除] 自由な香港結束し守れ

2020年11月15日 08:12

 中国が、香港立法会(議会)の議員に新たに中国や香港政府への忠誠を求める基準を定めた。香港政府はこれに基づき4人の民主派議員の議員資格を剥奪した。

 民主派議員の多くは直接選挙での選出だ。中国政府は「公職者が国家に忠誠を誓うのは国際的通例」と主張するが、「忠誠」のような曖昧な規定で、民意により選ばれた議員の資格を事後的に失わせるのは不当というほかない。

 6月の香港国家安全維持法(国安法)施行に続く今回の議員資格剥奪で、香港の自由と繁栄の基盤である「一国二制度」は風前のともしびだ。

 残る15人の民主派議員も、資格剥奪に抗議するとして辞表を提出した。民主派の全議員が立法会を去ることで、定数70の立法会は親中派41、中間派2、欠員27と親中派が圧倒的な構成になる。

 従来から親中派が多数を占める立法会だが、民主派は論議を通じて民主主義を機能させてきた。立法会や市民の抗議活動により、2003年の国家安全条例案や19年の逃亡犯条例案といった中国側の重視する法案を撤回に追い込んだこともある。

 民主派不在となる今後の立法会では、中国政府の意を受けた法案が次々成立するのではと懸念される。来年9月の立法会選でも「忠誠」欠如を理由に民主派の立候補が制限される恐れが強い。

 香港の「高度の自治」は、香港基本法(憲法に相当)に明記されており、中国の国際的約束でもある。4議員の資格剥奪は法と国際公約を否定するもので到底認められない。

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 中国の露骨な香港自治への介入に対しては、国際社会も批判を強めている。

 ポンペオ米国務長官は、4議員ら民主派勢力への支持を表明。資格剥奪は「香港の人々の権利を踏みにじるもの」だと中国を強く批判する声明を発表した。

 英国のラーブ外相は、4議員の資格剥奪は高度の自治を約束した1984年の中英共同宣言違反であり、国際条約である同宣言を順守するよう中国に求めた。EUも資格剥奪を直ちに撤回するよう要求している。

 一方、これまで香港の自治を巡り中国を強くけん制してきた米国が、大統領選挙後の政権移行を巡り混乱し、十分な対応ができていないのも事実だ。中国側も、こうした米国内の事情を見越して香港との一体化を強硬に進める方針とされる。香港の自由と民主主義は、まさに崖っぷちの状態にある。

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 国際公約を軽視する中国の姿勢は、香港市民だけでなく国際社会への脅威ともなり得るものだ。

 香港民主派は立法会での活動基盤を失った。仮に抗議辞職しなかったとしても、中国当局の恣意(しい)的な法運用で活動は大きく制約されたはずだ。米国内の混乱にかかわらず、中国に方針転換を促すには国際的な支援が不可欠である。

 日本も含む国際社会は改めて結束し、中国政府に香港の自治を尊重するよう強く働きかけるべきだ。香港の一国二制度の危機を、香港だけの問題にしてはならない。

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