「社会的養護」の場で育った子どもたちの声を大切に、巣立ち後も継続して支援する仕組みづくりを進めなければならない。

 県内の児童養護施設に入所する児童生徒や退所者を対象にしたアンケート結果がまとまった。答えたのは10~23歳までの137人。複数回答で施設生活の「良かったこと」「嫌なこと」などを聞いている。

 良かったことでは「人との関わりが増えた」が46・0%で一番多く、友だちや仲間との交流が上位となった。さらに「お金の心配がない」「学校に行ける」「三食食べられる」などの回答が一定割合を占めた。当たり前が当たり前ではなかった、入所前の厳しい家庭環境が目に浮かぶ。

 一方、気になったのは、良かったことが「ない」と答えた人が22・6%もいたことだ。

 その回答は嫌なことの上位となった「自由がない・ルールが厳しい」「職員が厳しい」とも密接に関係していると思われる。

 もちろん集団で生活するのだからルールは重要だ。時に厳しく指導しなければならない場面もあるだろう。

 ただ自由記述欄にあった「職員が少なく、話したいときに話せない」「施設生活という偏見を持たれつらかった」といった訴えは、施設や職員へもっと濃密な関わりを求める言葉と読み取れた。

 子どもが当たり前に成長できる権利をどう保障していくか。良かったことが「ない」の中身を、あらためて深く検証する必要がある。

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 虐待や経済的な理由から親と暮らすことができず、社会的養護のもとで育つ子どもが全国に約4万4千人いる。うち8~9割が児童養護施設や乳児院などで生活している。

 県内は約500人で、7割弱が施設入所だ。

 児童養護施設の入所は原則18歳まで。家庭という支えのない子どもたちにとって退所は自立を意味し、18歳以降の支援の弱さが課題とされてきた。

 県内の児童養護施設の子の大学等進学率は2014年の26・1%から、17年は29・4%に伸びている。だが県平均からは10ポイントも低い。

 近年、子どもの貧困対策の流れの中で、退所者への給付型奨学金や民間支援が広がっているものの、大学進学のハードルはまだ高い。

 早く自立しなければという意識やロールモデルの不在、大学入学後の中退率の高さが指摘される。

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 ことしは新型コロナウイルス感染拡大による影響も心配だ。

 NPO法人が5月に実施した調査で養護施設出身者の約2割が困窮を訴えたほか、相談したり支援を求めたりできる施設職員がいるとした人は約2割にとどまった。深刻な孤立が照らし出されたのだ。

 県のアンケートでも退所者の回答の中に「一人で抱え込む」つらさがつづられていた。

 退所した後も実家のように頼れる場所がつくれないものか。独り立ちを後押しし、見守り続ける息の長い支援が必要だ。