社説

社説[「1票の格差」判決]国会は抜本的見直しを

2020年11月19日 09:10

 昨年7月の参院選の「1票の格差」が最大3・00倍だったことは違憲だとして、二つの弁護士グループが選挙無効を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷は「合憲」とする判断を示した。全国14の高裁・高裁支部が昨年出した計16件の判決は「合憲」14件、「違憲状態」2件と分かれていたが、原告の請求を退けた判決が確定した。

 格差是正に向けた国会の取り組みへの評価が焦点だった。合憲の理由について、最高裁は「大きな進展を見せていないが、『合区』を維持し、わずかだが格差を是正している」と指摘。「選挙制度改革の実現は段階的にならざるを得ず、是正を指向する立法府の姿勢が失われたと断ずることはできない」とした。

 最高裁はかつて、参院の独自性を理由に、5倍を超える格差も合憲としてきた。1992年選挙で6倍を超えると「違憲状態」と判断。小幅な定数見直しに終始した国会に対し、その後、5・00倍の2010年選挙、4・77倍の13年選挙と立て続けに「違憲状態」とした。国会は15年の公選法改正で「徳島・高知」と「鳥取・島根」の2合区を導入し、16年選挙は格差が3・08倍に縮小した。

 憲法は「法の下の平等」を定める。投票権は民主主義の根幹となる権利であり、住む地域によって、有権者が投じる1票の価値に不平等が生じてはならない。

 合区導入以降、格差是正への国会の動きは鈍い。「平等」に向けた大幅な改善が見られない中、最高裁が合憲とするのは、立法府への甘い判断と言わざるを得ない。

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 15年に成立した改正法の付則には「19年の選挙に向け格差是正などを考慮し、抜本的見直しに必ず結論を得る」と明記されている。16年選挙を合憲とした最高裁も、この決意を高く評価した。しかし、19年選挙では、埼玉選挙区に限った定数調整だけに終わった。「掛け声倒れ」のそしりは免れない。

 合区導入に伴い、自民党主導で立候補できない議員の救済のため、比例代表に政党の意向で優先的に当選させる「特別枠」を新設。制度が複雑になり、分かりにくいとの批判もある。

 今回の最高裁判決は「合憲」としているものの、15人の裁判官のうち、3人が「違憲」とし、1人は「違憲状態」とする個別意見を付けた。格差解消に向けた改革を強く促したことを見過ごしてはならない。

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 現在の選挙制度は都道府県を選挙区の単位としている。地方から都市部への人口集中が進む現状を踏まえれば、定数調整だけでは限界がある。「地方の声」を政策に反映させるには、都道府県ごとに国会議員を選出するという在り方が最も望ましいのか。さらには、衆院との二院制の中で、「不要論」も取り沙汰される参院の役割をどう考えるのか。

 最高裁が合憲と判断したからといって、現状維持のままでいいはずがない。投票価値の平等に向けて、国会は一刻も早く抜本的な改革に踏み出す必要がある。

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