新型コロナウイルスの感染が全国で急拡大している。専門家が指摘する「第3波」の対策は待ったなしだ。
国内の19日の新規感染者数は2385人、東京都は534人で、過去最多を更新した。県内でも3カ月ぶりに50人を超え、9月の緊急事態宣言解除後、最も多くなった。
菅義偉首相は「最大限の警戒状況にある」として、食事中も会話の際にマスクを着用する「マスク会食」の実践を呼び掛けた。
経済や社会活動が徐々に拡大する中、政府は観光業支援の「Go To キャンペーン」を続ける方針を崩していない。一方、日本医師会(日医)の中川俊男会長は感染拡大のきっかけになったと指摘し、拡大地域との往来自粛を国民に求めている。
経済再生の流れを止めずに感染防止を図る難題への対応は続く。だが、人の移動に伴うリスクは避けられず、地域の感染状況に応じてブレーキを踏まざるを得ないケースも想定される。今がその瀬戸際といえる。
感染状況にも特徴がある。クラスター(感染者集団)の多様化だ。歓楽街だけでなく、職場や大学、外国人コミュニティーなどに広がっている。政府の分科会は、クラスターの未然防止に向け、空港などの検疫所と自治体の連携強化や店舗、職場での確実な感染対策の実施、多言語による情報発信-など五つの対策を提言している。
政府には具体的な成果につなげる施策を早急に進めてほしい。防止策に気の緩みはないか。警戒を強めたい。
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県内でのクラスターはこれまで28例が確認されている。
県庁では、会食に参加した同じ課の職員6人の感染が判明し、初のクラスター認定となった。県がコロナ警報で県民に呼び掛けている「会食は5人未満で2時間以内」の注意事項が足元で守られていなかった。
自民県議団のクラスターは、宮古・八重山地域で感染が拡大する中で発生した。大人数での視察、会食は不適切だったとして謝罪したが、危機管理の甘さが浮き彫りになった。
接待を伴う飲食店では、窓やドアを閉め換気が悪い状態で、客と従業員がマスクを着用せずにいたことも明らかになった。
県内では会食・飲食の場で感染が広がり、家庭内に持ち込まれるといったケースが目立っている。誰でも感染する可能性をあらためて認識する必要がある。
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21日からの3連休を前に、日医の中川会長は「秋の我慢」として不要不急の外出を控えるよう呼び掛けた。
「第3波」への備えとして、再びリモートワークを推進するための企業の環境整備の支援など、働き方を後押しする施策も必要だろう。
東京都は、事業所支援として高性能の換気機能がついたエアコン購入費の助成など換気設備導入の充実も挙げた。
県にはコロナ禍の生活を支えるきめ細かな支援策や「第3波」の危機感をあらゆる場所で共有できるよう、具体的な啓発策を発信してほしい。