[命ぐすい耳ぐすい 県医師会編](1243)

 「緑内障」は、日本人の失明原因の第1位です。目の奥にある神経の細胞死により見える範囲(視野)が欠けていきます。視野が狭まったのを自分で感じた時に眼科に行けばよいのでしょうか? それは違います。視野の狭窄(きょうさく)や欠損を自覚した時には既に進行している可能性が高いのです。なぜでしょうか?

 私たちは、見えないことを自分で感じることがとても難しいのです。目の奥にある光を感じる神経である網膜の細胞(視細胞)は、脳の後ろのほうにある視覚野へと情報を受け渡します。視神経の出入り口の部分には視細胞はなく、見えない部分(盲点)があります。しかし、片目で見ても盲点は自覚できません。曇り空なら雲が、花畑であれば花が、盲点の代わりに見えています。脳は情報を補って画像を作り出しているのです。

 これは充填(じゅうてん)知覚という現象として知られています。私たちが見ている世界は、私たちの脳が作り出した世界なのです。なんだか、映画「マトリックス」の世界に似ていると思いませんか?

 充填知覚のおかげで盲点が気になることはありませんが、緑内障で欠けてしまった視野も感じることが困難です。私たちの脳は、周りの情報をかき集めて欠けたところのない景色を作り出しています。結果として、視野の欠損にも気がつきません。緑内障は、気がつかないうちに忍び寄る影なのです。緑内障による視野欠損は治すことはできず、進行を抑えることが治療の目的となる病気です。そのため早期発見、早期加療がとても大切です。

 自分では気づけないのですが、人間ドックの眼底写真などで発見することもできます。眼科では、光干渉断層計(OCT)や視野検査などによっても早期に診断することができます。年をとるほど緑内障にかかりやすくなります。40歳を越えたら緑内障の検査を受けましょう。

 また、近視がある人は若いうちから緑内障にかかりやすいことが知られています。特に強い近視の人は若いうちから一度検査を受けておいた方がよいと思います。

(酒井寛・浦添さかい眼科=浦添市