出身地でもある関西での生活が長かった私が、関東に来て唯一望郷の念に駆られたのは、年末にそば屋に入ったときのこと。目の前のにしんそばはもちろん美味なのだけれど、慣れ親しんだ風味のだしとは違うので、脳が記憶している「そうこれこれ」の味と、今すすった一口の差を、どうにも理解できず、心が一瞬たじろいだのだ。