首相在任中の疑惑であり説明責任を果たすのが筋だ。今国会は5日に会期末を迎えるが、このままうやむやにしようとしているのであれば許されない。

 安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」の前夜祭を巡り、費用の一部を穴埋めしていたと安倍氏側が認めた。会場のホテルが発行した領収書を破棄した疑いがあることも分かった。

 昨年秋に浮上した前夜祭を巡る疑惑は深まるばかりだ。

 安倍氏は在任中、国会で「補(ほ)填(てん)はなかった」と繰り返し答弁し、参加者の会費でまかなったと述べてきた。補填していたのなら、その主張が崩れたことになる。野党が「虚偽答弁だ」と批判するのはもっともだ。

 安倍氏は本当に知らなかったのか。事務所側の報告に疑問を持たなかったのか。自らの責任についてどう考えているのか。安倍氏の口から聞きたいことはたくさんある。

 補填分は毎年100万円以上、多い年で約250万円、5年分で計900万円余りに上るとされるが、どこから捻出したのかも知りたい。

 一国の首相の自身の問題に関わる発言が、虚偽ではないかとの疑念を持たれている。本来なら自ら記者会見を開いて説明すべきだ。国会や国民への謝罪も求められよう。もし補填を知らなかったとしても道義的な責任がある。

 安倍氏は森友や加計問題でも、疑惑を否定したものの納得できる説明をしていない。首相在任中からの国会軽視が甚だしい。

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 菅義偉首相の姿勢も理解に苦しむ。

 菅首相は官房長官時代、「安倍氏が答弁した通りだ」と追認しており、責任は免れない。だが、11月30日の参院本会議では「必要なら安倍氏に確認し、誠実に答弁してきた」と自らの責任を否定した。

 安倍氏の証人喚問を自民党総裁として決断するよう迫られても否定的な見解を示した。官房長官として支えた経緯から安倍氏をかばっているのか。

 前夜祭が初めて開かれた2013年、安倍氏側は政治資金収支報告書への前夜祭費用の記載について総務省に問い合わせていたという。同省は政治団体に支出があれば記載が必要だと回答しており、安倍氏側は違法性を認識していたと東京地検特捜部はみている。

 菅首相には疑惑について丁寧に説明するよう安倍氏に求めてもらいたい。証人喚問など国会招致にも応じるよう促すべきだ。

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 1985年に議決された国会の政治倫理綱領は「疑惑を持たれた場合は自ら疑惑を解明し、責任を明らかにするよう努めなければならない」とある。与党内からも説明を求める声が相次いでいる。

 特捜部は政治資金規正法違反(不記載)容疑の適用を軸に捜査を進めているが、だからといって説明を拒む理由にはならない。

 国会議員としての資質が問われる事案である。説明責任が果たせないのなら安倍氏は責任を取って議員の職を辞するべきだ。