[リポート’20 嘉手納発]

 地震などの災害で大規模火災が発生する危険性が高く、避難も困難として、国が沖縄県内で唯一「著しく危険な密集市街地」に指定する嘉手納町嘉手納・屋良の通称「二番地地区」で、町が本年度、再開発に向けて本格的な整備事業に乗り出した。防災のための道路や、事業で影響の出る住民のための「都市再生住宅」を整備する。沖縄戦で米軍基地に土地が接収され、郷里を奪われた住民が戦後移り住んだ特殊事情があり、権利関係が複雑で再開発がこれまで進んでこなかった。町は「合意形成に向けて住民に丁寧に説明し、理解を得て危険性の除去に取り組んでいきたい」と話す。(中部報道部・大城志織)

道幅が狭く、入り組んでいる路地=11月19日、嘉手納町の通称「二番地地区」

 二番地地区は北街区と南街区に分かれ、約2ヘクタールに約100世帯が住む。一帯は建物間を通る路地の大半の道幅が2メートル未満で、災害時に救急車などの緊急車両が入れない。工事車両も入れず、老朽化した住宅の建て替えや解体も困難となっている。

 早急な対策が求められてきた一方で、郷里を基地に接収されて住む場所がなくなった多くの人が空いている土地を見つけて住み着いた一帯は、土地所有者、建物所有者、居住者がそれぞれ異なるケースもあるなど利害関係が複雑で、再開発が進まなかった。

■「著しく危険」

 2012年に国が県内で唯一「地震時等に著しく危険な密集市街地」に指定。町は同年から現地調査や意向調査に着手した。利害関係者でつくる同地区まちづくり協議会が再開発に向けて町と協議を重ね、18年に計画案を了承した。

整備後の「二番地地区」のイメージ図。右端の北街区に位置する建物が「都市再生住宅」で、中央の建物は建設を検討している複合施設(嘉手納町提供)

 協議会会長で地権者の一人、真喜屋清さん(81)は「戦後基地に故郷の土地が接収され、何とか空いている土地を見つけて、区画整理ができないうちに住み着いたのが始まり。そのまま街が発展してきた。一帯はまさに基地の町の縮図だ」と語る。過去には「長年ここに住んでおり、ここから動きたくない、現状のままでいい」との話を聞いたことがあるという。一方で、国の指定も受けて「緊急車両も通れない狭隘(きょうあい)な町。年月を経て、住民も問題意識が出てきた」と話す。

■今も続く交渉

 密集市街地整備事業は、防衛省や国土交通省の補助事業を使い、全体で約17億円の事業費を予定。計画では、北街区と南街区にそれぞれ緊急車両が通行できるよう、幅員6メートルの道路を造る。今年10月、道路予定地に住む人が入居できる「都市再生住宅」(6階建て、18戸数)建設が着工された。来年11月に完成予定。道路は北と南の2カ所で計340メートルの予定で、南街区から先に始め、23年度から工事を開始予定。2カ所合わせて26年度の使用開始を計画しているが、現在も利害関係者との交渉は続いている。一帯の中心に「複合施設」の建設も検討している。

 協議会に携わってきた真喜屋さんの妻博子さん(67)は都市再生住宅の着工に「安全・安心な街づくりに向けた目に見える大きな一歩。高齢者も多く、健在のうちに住民への理解や補償が進み、新しい街に生活できるよう丁寧に合意形成を進めてほしい」と期待する。町都市建設課は「早期の危険性除去に向けて、住民に丁寧に説明をしていきたい。町内は他にも密集市街地が多く、二番地地区をモデルケースとして進めていきたい」と話した。