社説

社説[コロナワクチン]安全な接種 早く公平に

2020年12月3日 05:00

 新型コロナウイルス感染症のワクチンを無料で受けられるようにするための改正予防接種法が成立した。費用は国が全額負担し、実施主体は市町村となる。改正法は、国が薬事承認し、実用化されたワクチンを「臨時接種」として提供すると規定。短期間に多くの人に接種するため、国民に接種を受ける努力義務を課す。接種開始に向けて、政府は準備を加速させる。

 本格的な冬を迎え、大都市を中心に流行の「第3波」が押し寄せる中、感染は収束に向かう気配はない。未知のウイルスに対する予防や治療の決定打は今のところなく、ワクチン接種への人々の関心と期待は高い。

 英政府は2日、米製薬大手ファイザーが開発したワクチンを承認したと発表。日本でも早ければ本年度内に審査手続きが終了し、接種が始まる可能性がある。

 一方、開発中の海外のワクチンは人工遺伝子などの新技術を活用しており、予期せぬ副作用が生じる懸念はぬぐえない。改正法は、承認された時点で有効性や安全性が十分に明らかでなければ努力義務が適用されないとしている。

 厚生労働省は「正しい知識を持ち、自分の意思で接種してもらう」との方針を示している。そのためには、ワクチンの効果や安全性に関するデータを開示し、国民が正しく理解して接種できる環境を整える必要がある。接種に際しては、高齢者や持病がある人、医療従事者を優先させ、必要な人がいち早く受けられるようにすべきだ。

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 世界保健機関(WHO)によると、ワクチン開発計画は世界中で200を超える。早期の実用化を目指し、国内外の製薬会社などがしのぎを削る一方、先進国を中心に開発段階から自国へのワクチン供給を確保しようという動きも活発化している。

 日本もファイザー社から1億2千万回分の供給を受けることで基本合意。その他の企業とも協議しており、分かっているだけでも5億3千万回分を確保した計算になる。

 ただ、先進国がワクチンを囲い込み、自国優先の「ワクチン・ナショナリズム」が過熱すれば、資金面で劣る途上国に行き渡らない状況になりかねない。

 ウイルスの広がりに国境はない。ワクチンを必要とする全ての人が、安価な費用で公平に接種できるよう、ワクチンを国際共同購入して途上国に分配する仕組みなども早急に構築してほしい。

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 一方、新たなワクチンへの過剰な期待は早計だ。一般的にワクチン接種には副反応による健康被害はまれではあるが、不可避的に発生する。改正法は、健康被害が出た場合の救済措置を整え、製薬会社が払う損害賠償金を政府が肩代わりする契約を結べる。

 臨床試験では浮かび上がらなかった副作用が見つかる可能性もある。安全性の見極めは慎重であるべきだ。

 改正法は成立したが、日本国内でワクチン接種できるまでしばらく時間がかかりそうだ。当面は手洗い、対人距離の確保など基本対策を徹底する必要がある。

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