沖縄タイムス社の元社員らの不祥事を受けた第三者を交えた特別検証委員会が3日公表した報告書について、メディアや企業経営の専門家が論評した。再発防止に向けた組織改革の必要性や、その実践による信頼回復を求めた。(関連記事>> 報告書全文>>)
■倫理観を備えた規定必要
西里喜明氏(県中小企業診断士協会顧問)
沖縄タイムス社社員(当時)の持続化給付金等不正受給問題は社会に大きな衝撃を与えた。
国会でのうその答弁の追及など社会正義の在り方が問われているこの時期に、不正を監視し正すべき側の報道機関のこのような不祥事はあってはならないことである。
この不祥事に対し沖縄タイムス社は迅速に反応し、社内調査を行い、さらに第三者を交えた特別検証委員会を立ち上げ、調査内容の検証、組織的課題、防止策をまとめた。
その内容は、不正受給問題に直結するものに限定せず、不正が起きた組織的課題、会社運営上の課題まで多岐にわたるものであり、高く評価でき、信頼回復への第一歩といえる。
沖縄タイムス社の従来の組織運営は、社員個々人の倫理観に委ねられており、性善説に基づいた良い社風とも言えるが、一歩間違えると悪を見逃すことにもなりかねない。高い倫理観を持ちながらも組織運営上の規定類の整備も重要である。
そして何よりそれを順守するという経営者自身の強い意志が求められる。知行合一を期待したい。
■「新聞人」一丸で改革を
山田健太氏(専修大学教授)
新聞社はかつて一つの「家族」だった。いい意味では、紙面を作る編集も、それを製版し、印刷する部署も、広告の営業スタッフも、そして配送し最後に各家庭に配る販売店まで、みな「新聞人」だったわけだ。商品たる新聞を大切にし、少しでも良くしようと努力してきた。
しかし時代を経て、分社化もされ、付き合いも希薄になり、紙面にミスがあるのを気付いても、記者でなければ「まあいいゃ」と思うようになってはいないか。あるいは悪い面では、家族だから甘えていたこともあった。お互い思いは通じているという安心感から、きちんとルール化していなかった面や、悪さをした社員を甘やかしていたこともあったと思う。
そうした良い面が減退し、悪い面が拡大する中で、今回の事件は起きたのではないかということを、今回の報告書を読んで改めて感じた。そうした気付きを与えられたわけであるから、かつての「家族」を、メディア批判が吹きすさぶ今の時代に耐えうるような「新しいかたち」に変えるのは、オール沖縄タイムスの一人一人だと思う。
最後に報告書そのものについて一つだけ。ここでは「コンプライアンス」強化をうたうが、報道機関にとって大切な基準は、法令以上にジャーナリズム倫理であることを忘れないでほしい。(ジャーナリズム学科=言論法)