菅義偉首相がきのう官邸で記者会見に臨んだ。正式な会見は外遊時を除き9月16日の就任時以来となる。約2カ月半ぶりに開いたにもかかわらず、この間、噴き出した疑問や疑惑への納得いく説明はなかった。

 冒頭、菅首相は「第3波」が押し寄せている新型コロナウイルス感染症について強い危機感を示し、「国民の命と暮らしを守るのが最大の責務」と述べた。

 感染防止と経済活動を両立させる方針を重ねて示した格好だが、ブレーキとアクセルを同時に踏む難題への対応は必ずしも明確ではない。

 自ら主導してきた観光支援事業「GoToトラベル」は迷走続きである。

 首相は東京都の小池百合子知事と会談し、東京発着の旅行について、重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患のある人の利用自粛で合意したばかりだ。

 都は「停止」も想定していたという。だが来訪者や出発者が多く、事業全体への影響が想定されることから、「自粛」での決着となった。

 東京都医師会などは「このままでは医療崩壊につながる」と中断を訴えていたが、結果的に新規予約を強制的に停止した札幌、大阪両市とは異なる判断が下された。

 両立に固執するあまり、分かりにくく、中途半端な対応になったことは否めない。

 政府はトラベル事業を来年6月まで延長する意向を示している。「収束後に実施」としていた当初方針にいま一度立ち返る必要があるのではないか。国と自治体の権限の在り方も整理する必要がある。

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 会見では安倍晋三前首相の後援会による「桜を見る会」前夜祭を巡る疑惑への質問もあった。

 参加費で賄えなかった費用900万円余りを補填(ほてん)したとされる問題で、菅氏は「答弁したことに責任を持つことは当然」と答えたものの、官房長官時代の国会答弁を撤回することはなかった。

 安倍氏が国会で後援会の収入、支出は「一切ない」と明言したことに対し、首相も官房長官として「安倍氏が答弁したとおりだ」などと追認してきた経緯がある。

 これでは疑惑に対する説明責任が全く果たされていない。

 会見は、臨時国会の事実上の閉幕を受けてのものだ。議論すべきことが山積みなのに、政府、与党はこのまま国会を閉じるという。野党の会期延長要請に応じないのは、追及から逃れようとしているとしか思えない。

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 日本学術会議の会員任命拒否問題に関しても首相は「適切な判断を行った」「理由は人事に関することなので差し控えたい」とこれまでの答弁を繰り返すだけだった。

 共同通信が先月実施した調査で、この問題への説明が「不十分だ」との回答が7割近くに上った。世論の厳しい目が向けられているのだ。

 正式な記者会見が今回で2回目ということが示すように、指摘されるのは国民への説明に消極的な姿勢だ。政治家に必要な言葉が決定的に不足している。