政治とカネを巡る問題が後を絶たない。

 自民党の吉川貴盛元農相が大臣在任中に、鶏卵生産大手「アキタフーズ」グループ元代表から現金500万円を提供されていた疑惑が浮上している。さらに、元農相で内閣官房参与を辞任した西川公也氏にも数百万円が渡ったとみられている。両氏とも政治資金収支報告書への記載がなく政治資金規正法違反に加え大臣経験者による収賄という重大な疑いが持たれている。

 吉川氏は2018年10月から約1年、安倍内閣で農相を務めた。元代表は業界団体の役員を務め、家畜を快適な環境で飼育する国際基準の義務化見送りや、鶏卵価格が下がった際に生産者の損失を補填(ほてん)する「経営安定対策事業」を巡り、政治家や農水省に積極的に働き掛けていた。

 設備投資によるコスト増につながるとして、国際基準の導入に、生産者側には根強い反対があった。

 いずれも経営に直結する問題で、業界に有利に働いた。

 西川氏は元自民党衆院議員で、農相を務めたが15年に自身の政治資金問題で辞任している。今回、業者側から豪華クルーズ船で接待を受けたことも明らかになっている。

 農相は畜産業の政策決定に幅広い権限を持ち、贈収賄事件に発展する可能性がある。

 現金の授受が政府の政策に影響を与えた可能性も、否定できない。

 東京地検特捜部には、徹底した厳正な捜査を求めたい。

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 吉川氏は疑惑報道を受けると同時に不整脈で入院した。党の全役職を辞任すると談話を発表。疑惑には「当局から説明を求められれば、対応する」と記しただけだった。

 西川氏もすぐに、内閣官房参与を辞めた。西川氏は周囲に「自民党と政府に迷惑をかけるので身を引く」と伝えたが、公の場での説明はない。

 両元農相とも、疑惑について積極的に説明しようという意思が感じられない。

 政権の要職にあった政治家の汚職が続いている。

 内閣府副大臣だった秋元司衆院議員はカジノ進出を狙った中国企業から賄賂を受けた容疑で逮捕・起訴された。

 吉川氏の収賄疑惑は、河井克行元法相とその妻、案里参院議員の大規模選挙買収事件に関連した捜査で発覚した。

 事件はいずれも安倍政権時代に起きている。安倍前首相が関わる桜を見る会の前夜祭の捜査も続いている。長期政権のおごりと政治の私物化が生んだ異常事態ではないか。

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 野党4党は9日、国会内で会談し吉川、西川元農相の国会招致を求める方針で一致した。両氏とも国会に出席して、向けられた疑惑に、きちんと答えるべきだ。

 菅政権は両氏の収賄疑惑や桜問題など政治とカネの問題で、捜査中であることを理由に言及を避け続けている。

 吉川氏は自民党総裁選で菅氏の選対事務局長を務めた。西川氏も内閣官房参与として重用した。だからこそ、菅首相は疑惑解明に積極的に動くべきだ。疑惑を向けられた側近をかばうようでは政治不信はますます高まる。