那覇市立中学校3年時に男性教員からわいせつ行為を受けた女子生徒が沖縄県立高校進学後の2014年末に自殺した問題で、高校が自殺後の調査でも生徒がわいせつ被害者だったことを把握できず、「原因不明」として国や県教育庁に報告していたことが10日、沖縄タイムスの調べで分かった。出身中学校からの申し送りもなく、自殺の背景に関わる重要情報を見落としていた。生前の生徒への配慮や、自殺後の遺族対応に影響が出た可能性がある。(編集委員・鈴木実)

沖縄県庁

■複数の高校教員「知らなかった」

 管理職を含む当時の複数の高校教員が「中学時代のわいせつ被害について最近の報道まで知らなかった」と証言し、教育庁も「原因不明」として報告を受けたことを認めた。

 生徒はわいせつ行為を受けるようになった13年秋ごろから体調を崩し、高校入学後も精神科に通院。自殺の前には母親や医師、周囲の友人らに「高校でもうわさが広がり、学校に行きたくない」などと繰り返し話しており、自殺との因果関係が強く疑われている。

 那覇市教育委員会によると、性被害のような事案は本人や家族の意向も関わるため、出身中学が高校側に伝えるかは個別判断になる。しかし今回のケースでは、申し送りをするかどうかや、どの程度伝えるかを巡って、生徒側と十分にすり合わせた形跡はない。

 母親によると、わいせつ被害によって欠席が増えた生徒について、母親が高校入試への影響を懸念して中学校に相談した際に「欠席の扱いをどうするか、高校と調整する」という趣旨の説明を受けた。しかし実際にはそうした配慮がなく、入試の面接で欠席が多い理由を問われた生徒は動揺していたという。

 ごく一部の高校教員は自殺の2週間ほど前、保護者からわいせつ被害について打ち明けられた上で、男性の教員との個別指導を避けるといった配慮を要請された。ただ、教員間でもできる限り内密にしてほしいとの保護者の意向があったほか、生徒が亡くなった後も自殺かどうかはっきりしなかった事情が重なり、管理職も含めた組織的な情報共有はできていなかった。

 国は児童生徒が自殺した際、「基本調査」として速やかに全教職員や関係の深かった子どもから聞き取りするほか、自殺の背景に学校生活が疑われるような事案では、さらに「詳細調査」をするよう指針で求めている。

 高校は基本調査を実施したとされるが、結果的にわいせつ被害は把握できず、「原因不明」として国や教育庁に報告した。詳細調査はしていなかった。

■性被害に対する認識の甘さ根底に

 高1で自殺した女子生徒が中学校時代に教員からわいせつ行為を受けていたという重大な情報を、教育行政全体が見逃していた。性被害に対する認識の甘さが根底にあると言え、情報共有や調査の在り方が妥当だったのか厳しい検証が求められる。

 一般的に、被害者のプライバシーなどに配慮し、中学校が高校への申し送りを控えることはあり得る。しかし、今回は加害教員が懲戒免職になった悪質性の高い事案で、生徒は体調も崩している。申し送りがなければ、高校がきめ細かい支援や配慮をすることも難しい。中学校が、生徒側と丁寧に調整した上で「申し送りはしない」と判断したのか疑問だ。

 高校の調査も不十分だった。生徒は母親や高校の友人に悩んでいることを繰り返し打ち明けているほか、一部の教員は自殺の2週間ほど前に、母親から中学時代のわいせつ被害について聞いている。自殺が起きた際の国の指針は、全教職員や関係の深い子どもへの聞き取りを求めており、適切な調査をすれば学校側が把握して再発防止の取り組みにつなげることもできたはずだ。

 生徒の自殺後、母親も体調を崩し入院している。「原因不明」と結論付けられたことで学校や教育委員会の責任があいまいにされ、遺族や他の生徒のケアに支障が出た可能性もある。

 母親は最近まで、加害教員が6年前に懲戒免職になったことも知らなかった。性被害の重大さを踏まえればこうした対応は考えられず、教育行政全体が認識を改める必要がある。