遅きに失した判断だ。

 政府の観光支援事業「Go To トラベル」が今月28日から来年1月11日まで全国で一時停止されることが決まった。新型コロナウイルス感染症対策本部で菅義偉首相が表明した。

 政府の専門家組織が、感染拡大が続く地域ではトラベル事業を一時停止するよう提言したのは、その3日前。菅首相は同じ日にインターネット番組で「まだそこは考えていない」と否定的だった。

 「いつの間にかGoTo事業が悪いことになっている」と述べ、自身の肝いりの政策にこだわりを見せていた。切迫した専門家組織とは明らかに温度差があった。

 一転して全国一律の停止を決めたのは、感染拡大に歯止めがかからない「第3波」に国民の不安が高まったからだ。

 政府は11月下旬から「勝負の3週間」と訴えながら小手先の対策にとどまり、危機意識を浸透させられなかった。

 その結果、国内の1日当たり新規感染者数は3千人を超えた日もあった。重症者も600人近くに迫っている。

 医療提供体制が逼(ひっ)迫(ぱく)し、非コロナ病床まで影響を受ける中で、トラベル事業続行に疑問の声が相次いだ。共同通信が今月上旬実施した世論調査では、政府のコロナ対策を「評価しない」が55・5%に達している。

 全国一斉の休校要請の時もそうだが、場当たり的で泥縄式の対応が繰り返されている。巻き込まれたのは、年末年始の休みを利用して旅行を予定していた人たちや観光業者だ。

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 落ち込んだ経済の回復が重要なのは言うまでもない。コロナ禍に関連する解雇や雇い止めは、国が把握しているだけで7万5千人に上る。自殺者も増えている。その中でGoTo事業が一定の成果を上げているのは事実だろう。

 経済と感染防止との両立という難題に取り組む以上、首相が自身の言葉で国民に向けてメッセージを発信し、協力を要請する必要がある。

 もちろん感染状況に応じて事業の在り方を柔軟に軌道修正する準備も求められていた。それが欠けていたのは批判を免れない。

 政府の専門家組織の尾身茂会長は、感染状況の判断や一部の対策で「国と自治体で一体感がない」とし「知事はリーダーシップを発揮して先手を打ち、国は後押しをしてほしい」と述べた。もっともな指摘であり、両者とも重く受け止めてもらいたい。

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 県内でも感染者数の高止まりが続いている。玉城デニー知事は那覇、浦添、沖縄3市の飲食店などに午後10時までの時短営業を要請すると発表した。期間は今月17日から28日までの12日間。応じた店舗には協力金として最大24万円を支給する。

 玉城知事は会見で「このまま感染者数が減少しなければ年末年始に医療崩壊を招く危険性が高まる」と協力を求めた。

 年末年始はもともと医療体制が手薄になる。救えるはずの命を救えない状況に陥らせてはならない。改めて気を引き締めたい。