米大統領選の勝者を正式に選出する選挙人投票で、民主党のバイデン前副大統領が共和党のトランプ大統領を大きく引き離し勝利を確定させた。

 本来なら形式的な手続きにすぎない選挙人投票だが、トランプ氏が敗北を認めず法廷闘争戦術を繰り広げたため、大きな注目を集めることになった。

 勝利確定を受けてバイデン氏は、トランプ氏の法廷闘争を「民意と法の支配、憲法を否定するものだ」と厳しく批判した。国民に向けては「民主主義が勝った。次のページに進むときがきた」と訴えた。

 今は結束して、分断の傷を癒やすときである。

 激戦州での結果の無効化を求めたトランプ氏側の訴えは、既に連邦最高裁で退けられている。

 ただトランプ氏は選挙人投票後も「多くの票がバイデンに回った」とツイッターに書き込み、支持者をあおっている。

 今回の選挙ではトランプ氏が「彼らは選挙を盗もうとしている」と相手陣営を攻撃した結果、根拠不明の陰謀論が共和党支持層に浸透していった。 

 FOXニュースが先週実施した全米世論調査では「トランプ氏は選挙を盗まれた」との回答が、トランプ氏に投票した人に限ると77%にも上った。

 この4年間で露呈した米国の民主主義のもろさは、現職大統領がその根幹である選挙制度そのものを揺るがす事態にまで発展したのである。

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 トランプ氏が接戦州の票差をひっくり返して全体の選挙結果を覆そうとしたこともあり、最多票を得た候補者が選挙人全員を独占する「勝者総取り」方式から、直接選挙制度へ移行すべきだとの声が高まっている。

 2016年の大統領選で、クリントン元国務長官はトランプ氏に総得票数で上回りながら、選挙人獲得数で敗れた。

 矛盾をはらむ選挙制度の見直しにも向き合った方がいい。

 バイデン氏は来年1月、第46代大統領に就任する。

 そう遠くない時期にトランプ氏は撤退を迫られることになるだろう。しかし米社会に根を下ろすトランプ主義的なものは容易には払拭(ふっしょく)できない。

 バイデン氏に求められるのは、自らに票を投じた約8千万人の思いを受け止めながら、トランプ氏に投票した約7千万人にも気を配ることだ。

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 バイデン次期政権の主要閣僚は多様性を意識した布陣となっている。

 性被害を告発する「#MeToo」運動のうねりや、黒人差別反対運動「ブラック・ライブズ・マター」が広がる中、その声を政治に反映させるためにも必要な人材配置である。  

 バイデン氏は国際協調にかじを切る姿勢も示している。

 新型コロナウイルスの抑え込みが最優先の課題だろうが、先進国が自国民向けにワクチンを独占することがないよう、途上国支援でも真価が問われる。