男女9人が殺害された座間事件の裁判員裁判で、東京地裁立川支部は白石隆浩被告(30)に求刑通り死刑を言い渡した。

 最大の争点だった殺害への承諾について「9人全員になかった」と認定。白石被告が一貫して目的にかなう行動を取ったとして、完全責任能力があったと結論付けた。「人命軽視の態度は甚だしく、犯罪史上まれに見る悪質な犯行」とし、「死刑をもって臨むことが真にやむを得ない」と断じたのだ。

 神奈川県座間市内のアパート一室で2017年、男女9人の切断された遺体が見つかった事件である。会員制交流サイト(SNS)で自殺願望を明かすなどした被害者を「一緒に死ぬ」などとだまして自宅に誘い、2カ月のうちに次々と殺害した。遺体をバラバラにして遺棄するという陰惨な犯行は、SNSの利用が当たり前になった社会に衝撃を与えた。

 10回の逮捕と5カ月に及ぶ精神鑑定、今年9月から24回にわたる審理を経て、ようやく一つの結論が出た。判決は動機について、白石被告の供述どおり、金銭や性欲目的と認定した。しかし、なぜ9人の命を奪う残忍な行為に至ったのかという「心の闇」を十分解明したとは言えず、釈然としないものが残る。

 事件から3年がたち、記憶が曖昧になったとみられる白石被告が公判で、詳細を「覚えていない」と述べる場面が目立った。長期間に及んだ公判前整理手続きの弊害を指摘する声も上がる。

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 事件では、生きづらさを抱え、わらをもすがる思いでSNSに書き込んだ若者が狙われた。将来を悲観することは誰しもある。社会経験の乏しい若者であれば、なおさらだ。「死にたい」というつぶやきは「生きたい」という心の叫びの裏返しとも言える。

 証言台に立った遺族の言葉からは、悩みながらも前を向き、未来を描こうとしていた9人の姿も浮かび上がった。

 「娘は生きようと思って頑張っていたと思う」。神奈川県厚木市の女性=当時(21)=の母は声を震わせた。女性は正義感が強く、学生時代はいじめられている友人に寄り添った。中学生の頃から精神的に不安定だったが、高校卒業後は真面目に働き、貯金していたという。

 そのほかの被害者も、ツイッターに死への願望をつぶやく一方で、将来の夢や目標を持っていた。

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 白石被告は、希望と苦悩で揺れ動く被害者らの心の隙間につけこみ、忍び寄った。

 事件を受けて、厚生労働省がSNSを使って相談事業をしたところ、2019年4月~20年3月の延べ相談件数は4万5106件。19歳以下が43%で20代を含めると83%に上る。自殺願望やメンタル不調が大半だった。

 犯罪に巻き込まれる前に、いかに若者のSOSをすくい取るか。スマートフォンで見ず知らずの誰かとつながることが心の安定剤になるのではなく、実生活の中で安全な居場所で過ごし、対話することで孤独感を解消する取り組みが社会全体に求められる。