国の緊急時に必要なのはリーダーの説得力ある言動と発信力だ。

 新型コロナウイルス感染対策を重要課題に掲げてスタートした菅内閣の危機管理能力には大いに疑問符がつく。

 政府の対策分科会が、観光支援事業「Go To トラベル」の見直しを再三求めてきたにもかかわらず、菅義偉首相は当初、「感染拡大の証拠はない」と拒否していた。

 感染対策と経済回復を両立させる姿勢を崩さずにきたが、「第3波」の勢いが増す中、年末年始を控える直前で一転、Go Toの一時停止を決めた。「最大限の防止措置」としたが、泥縄式の対応と言わざるを得ない。

 国民に5人以上の会食の自粛を求めているさなかに、首相自らが15人前後の忘年会に参加していたことも明らかになった。「国民の誤解を招くという意味で真摯(しんし)に反省している」と述べたが、説得力はない。政府指針と矛盾する行動の説明も果たしていない。

 さらに食事中でもマスクを着用する「静かなマスク会食」の実践を呼び掛けていたが、関係者によると会食中にマスクは着けていなかったという。コロナ対応のちぐはぐさが顕著になっている。そこから、コロナ禍を「国難」と位置付ける危機感は一切伝わってこない。

 共同通信の調査によると12月の菅内閣の支持率は50・3%と前月から急落した。コロナ対策は55・5%が「評価しない」と厳しい目を向ける。

 暮らしや経済が大打撃を受ける中、首相自ら国民の不安や疑問に答えるよう説明責任を果たすべきだ。

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 菅内閣のコロナ対策を巡っては、地方自治体との意思疎通の不十分さや温度差も浮き彫りになった。

 Go To事業の運用見直しなどについて、全国知事会からは、各都道府県知事に対応を丸投げされたことへの懸念や反発もあった。不明確な運用基準や責任の所在など、国のリーダーシップを求める意見も上がった。

 Go To一時停止では、地方から「もっと早く決定してほしかった」「方針の振れ幅が大きい」など戸惑いもあり、自治体との意思疎通や情報共有に課題も残った。

 ドイツのメルケル首相は、コロナによる1日当たりの死者が過去最多となった際、議会の演説で感情をあらわにして危機感を訴えた。

 努力が不十分だったと率直に認めた上で、拳を振り上げながら感染防止と対策を呼び掛ける姿からはリーダーの覚悟と真剣さが伝わった。

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 菅内閣が発足して3カ月が過ぎた。この間、目立ったのは首相が国民の疑問に丁寧に答えないということだ。

 日本学術会議の会員任命拒否を巡っては、いまだ納得できる説明をしていない。

 元農相らが鶏卵生産大手から現金を受け取っていたとされる疑惑についても、言及を避けるなど真相解明に努める姿勢は見えない。

 これまで官邸で開いた記者会見はわずか2回だけだ。十分な説明を尽くさずして「国民のために働く内閣」とはとても言えない。