新型コロナ沖縄の今

給付金も尽きLINEで「助けて」 コロナ禍の年末 食料配達ボランティアルポ

2020年12月23日 06:24

[新型コロナ 沖縄の今]

 新型コロナウイルス感染拡大で沖縄経済が急速に冷え込む中、観光・飲食関係で生計を立てる世帯を中心に「食べるものがない」という状況がじわりと広がっている。見えづらいSOSをどうすくい取るか。公的支援が途切れがちな年末年始を前に、相談支援窓口までたどり着けない子育て世帯とのつながりを求めて奔走する食料配達ボランティアの活動に密着した。(社会部・篠原知恵)

訪問した理枝さん(左)に、長男を抱きながら「夫は金銭面の話をするとイライラする。毎日、明るく振る舞っている」と明かすユミさん=2日、本島中部

■運送業の夫、手取り15万円未満

 「2週間前に携帯がまた止まっちゃって」。本島中部の賃貸アパート。生後5カ月の長男をあやし、ユミさん(24)=仮名=が申し訳なさそうに頭を下げた。

 「LINE(ライン)」の未読状態が続くのを心配し、ボランティア団体「女性を元気にする会」代表のゴージャス理枝さん(49)が訪ねた2日午後。食材の詰まった段ボールを手渡すと、ユミさんは「息子の食事優先で1日1食の生活。助かる」と力なく笑った。

 夫(24)は運送業で働き、主な顧客は居酒屋。コロナ禍が直撃した今春から収入は安定せず、やっと自宅待機が解除された今も手取りは15万円を下回る。「来月はまた下がる」という。

 夫の給料日にミルクなど息子の必需品をまとめ買いし、家賃や大型運転免許の取得費用の分割などの支払いを済ませると、残るお金はわずか。夫婦の食べ物はほぼ買えず、理枝さんの食料配達や、妹からのもらいものでしのぐ。最近、携帯電話がよく止まるのは、ガスや電気料金も滞納しがちな窮状があるからだ。

 夫が仕事に出る日中は電話もインターネットもできず、部屋で独り、初めての育児に奮闘する。実家は車で1時間の距離だが車はなく、近所に知り合いはいない。出産直前まで食堂アルバイトでためた貯金も、夫婦の特別定額給付金も尽きた。「こんなはずじゃなかった。未来が見えない」。生活できなくなり、妹に送ってもらい母子で実家に数日間「避難」することが増えた。

 ただ、実家の両親も勤務する観光施設の休業で生活に余裕はない。夫の実家も似た状況で「みんな大変で頼りづらい」と顔を曇らせる。出産直後に訪ねてきた行政の保健師にも、認可保育所の申請手続きで接した行政職員にも、悩みを切り出せなかった。理由は「特に何も聞かれずタイミングが分からなかった」から。

 〈誰にも話していないのか泣きだす〉〈緊急小口資金なども知らない〉

 ユミさんを初めて訪ねた10月末の理枝さんたちの記録。同様に運送業の夫の収入減で困窮した臨月の妹がSNSで理枝さんの活動を知ってつながり、携帯が止まったユミさんの住所も教えていた。

■新規支援は135世帯

 〈困っているママに無償で食料配達します〉。ボランティア団体「女性を元気にする会」は9月からSNS(会員制交流サイト)で、新型コロナウイルスの影響で家計が苦しくなった世帯に食料配達支援を呼び掛け始めた。22日までに新規支援は135世帯となり、8月末時点の10世帯から急増。代表のゴージャス理枝さん(49)は「あまりに急に経済が落ち込んだために、貧困が見えづらくなり必要な世帯に支援が行き届いていない」と危機感を募らせる。

SNSで「助けて」と連絡をしてきた女性(左)に食料を渡すゴージャス理枝さん(中央)、マツ毛美紀さん=13日、本島内

 135世帯のうち約9割は、当面の生活費を無利子で借りられる国の支援制度「緊急小口資金(特例貸し付け)」を利用していなかった。「知らなかった」という人が最多で、社会福祉協議会での手続きが分からなかった人も目立つ。

 ひとり親でなく、新型コロナ以前には家計のバランスが「中流」だった世帯ほど、周囲も支援の必要性に気付きづらい。那覇市社協で子どもの居場所支援に関わる城間えり子さん(59)は「子どもの居場所は各地で増えており利用も呼び掛けているが、情報が行き届かずたどり着けない世帯も少なくない」と話す。

 SNSでの呼び掛けは、どこにどう相談すればよいか分からず孤立する世帯の駆け込み寺になっている。

 だが急増するニーズに、理枝さんらの人手も食料も追い付いていない。

 食料配達は、経営する那覇市の美容サロン「ビューティーサロンゴージャス」の定休日や閉店後。サロンスタッフのマツ毛美紀さん(41)と南は糸満、北は名護まで奔走する。理枝さんら自身、活動の補助金として市社協から受け取った8万5千円だけでは足りず、ガソリン代を含め経費を自費で賄っているのが現状だ。

 市社協や民間企業、個人から提供を受け5年前から食料支援などを続ける。2人のユニークな名前は「緊急時にすぐ思い出して、SNSで検索してもらえるように」と願いを込めた“愛称”だ。

 食料支援は「あくまでSOSを見つけるきっかけづくり」という。車を持たない世帯も多く「配達」にこだわっている。初回訪問で状況を聞いて次の配達ペースを決める。社協や就労支援窓口などにも同行し、公的支援につなぐ。SNSでグループをつくり、フードバンクのイベントなどの支援情報なども流している。

 公的支援が手薄になる年末年始を前に、新たな依頼は増える一方だ。すでに一部の配達は年始に持ち越す判断を迫られており、理枝さんは「めちゃくちゃ歯がゆい」と唇をかんだ。

●疑問・困りごと募集

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