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「うそだろ…」踏んだり蹴ったりの沖縄観光 可能性を感じた再生の糸口

2020年12月25日 06:00

 [観光再生への糸口](上)

感染防止対策のためパーテンションの設置を徹底した宴会場を紹介する河野航係長=22日、那覇セントラルホテル

 「うそだろ」

 政府が「Go To トラベル」の全国一斉停止を発表した14日夕、沖縄ツーリスト(OTS)県内企画室の藤江貴紀室長は、絶句した。

 「(停止のニュース)見た?」。社の幹部でつくる無料通信アプリLINE(ライン)のグループには、メッセージが飛び交った。

■また稼ぎ時直撃

 「ゴールデンウイーク、夏休み、そして年末年始」。県ホテル旅館生活衛生同業組合専務で、那覇セントラルホテルの中村聡社長が指を1本ずつ伸ばす。

 「沖縄観光は最後の稼ぎ時すら奪われた」

 加盟ホテルの平均稼働率は、一番底の5月が前年比59・8ポイント減の5・2%だった。11月は10・2ポイント減の49・2%に回復。年末年始は80~100%に持ち直すホテルもあっただけに、落胆が大きい。

 業界には胸を張れる実績がある。「観光施設や宿泊施設でクラスター(感染者集団)は発生していない」。

 加盟ホテルは、個別に感染防止のガイドラインを作っている。サーモグラフィーカメラや非接触型の体温計で、入館者全員を検温。体調不良者には離れた部屋を割り当てたり、あらかじめ決めた隔離フロアへ案内したりする。

 宴会場やレストランも消毒を徹底し、座席ごとにパーテーションで仕切る。

 にもかかわらず、年末年始の稼働予測はすでに50%まで落ち込んでいる。

■ホテル救いたい

 「地元のホテルを救うため、県民向けの商品を売りだそう」。15日朝、OTSは緊急対策会議を開き、新たな商品の造成を決めた。

 販売した商品のキャンセル手続きは、詳細が分からない。ホームページなどのシステム改修、料金払い戻しの事務手続き、地域共通クーポンの回収…。あらゆるケースを想定するよう指示が下った。

 予約者にはGoTo停止後も予定通り旅行するかどうかの確認、価格やホテルへの仕入れ料金の変更、再予約手続き。煩雑な対応が待っていた。

 会議後、藤江室長は契約ホテルへ連絡し、商品作りに取りかかった。18日の新聞に29日~1月3日宿泊分の「Go To トラベルではありません」と明記されたプランを掲載。販売を始めた。

 不安もあった。「移動自粛を求めるムードの中、県民が受け入れてくれるだろうか」

 ホテルは年末年始用の食材を発注している。「膨大な損失。県内ホテルを少しでも助けたい」。新聞に載せた広告は、県内17のホテルを利用する県民向けプランだった。

 ふたを開けると、3日間で155件、520人分の予約が入った。「地域内観光で経済を回す、マイクロツーリズム(近場観光)の考え方が根付く機会になるのでは」。沖縄観光の復活に向けた一歩になる可能性を感じた。

 ◇  ◇  ◇

 「Go To トラベル」の全国一律停止など、年間を通して新型コロナウイルスで打撃を受けている観光業界。新たな価値観や生活に対応するため模索する、業界の今を探る。(政経部・川野百合子)

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