相変わらず言葉は丁寧で、説明にもよどみがなかった。反省の姿勢も示した。だが、具体的で説得力のある説明は、一つもなかった。

 釈明会見から浮かび上がってきたのは「果たして真実を語っているのだろうか」という拭いがたい疑問である。

 「桜を見る会」の前日に行われた夕食会費用を巡り、東京地検特捜部は、政治資金収支報告書に収支を記載しなかったとして、安倍晋三前首相の公設第1秘書を政治資金規正法違反の罪で略式起訴した。

 安倍氏本人については、指示や了承などの具体的関与がなかったとして不起訴処分にした。

 決定を受けて急きょ記者会見した安倍氏は、後援会が夕食会費用の一部を負担していた事実を公式に認めた。

 「私が知らない中で行われていたこととはいえ、道義的責任を痛感している」

 謝罪はしたものの、責任の取り方には触れなかった。あぜんとしたのは「初心に立ち返り、研さんを重ね、責任を果たしていきたい」と、臆面もなく語ったことだ。

 安倍氏は国会で何度も、「補填(ほてん)は一切ない」と否定し続けた。「総理大臣として答弁するということについては、すべての発言が責任を伴う」とも語っていた。

 衆院調査局の調べによると、事実と異なる答弁は少なくとも118回に上る。

 仮に安倍氏が語ったことが事実だとしても、国会の場で繰り返し「虚偽答弁」を重ねた事実は重く、議員辞職に値する重大な失態だ。

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 夕食会の収支が政治資金収支報告書に記載されていない事実が発覚したのは、昨年10月のことである。それ以来、国会では繰り返し、この問題が取り上げられた。

 へたをすれば一大スキャンダルに発展しかねない事案に対して、公設第1秘書が、安倍氏に虚偽の報告を続けるということが果たしてありうるのだろうか。

 収支報告書への不記載や虚偽記載を巡っては、これまでは指摘を受けた後、その事実を認め、事後的に修正するケースが多かった。

 だが、今回の事例は、略式起訴で済ますには、あまりにもことが重大だ。

 「補填していない」ことを前提とした隠蔽(いんぺい)工作が毎年、繰り返され、問題発覚後に提出された2019年分にも記載していなかった。

 公設第1秘書は、補填金をどのように工面したのか。安倍氏は「手持ち資金で」と説明したが、真相解明にはほど遠い。

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 「桜を見る会」については、公的行事の私物化や招待者名簿の不自然な廃棄、「首相推薦枠」によるマルチ商法元会長の招待など、数々の疑惑が今なおくすぶっている。

 安倍氏はきょう、衆参両院の議院運営委員会で経緯などを説明するが、「虚偽答弁」が問題になっている以上、偽証罪が問われる予算委員会で証人喚問すべきである。

 「政治とカネ」を巡る問題が相次いで発覚し、国民の政治不信は募るばかりだ。与野党にはウミを出し切る覚悟を求めたい。