10月に亡くなった大城立裕さんの短編小説「つり皮と年賀状」は1966年1月1日付の本紙に掲載された。庶民の「人並み」の正月風景をしゃれっ気交えて描く

▼配達不可で戻ってきた息子の年賀状が女性宛てだったことが気になったり、思いがけない人からの便りに甘酸っぱい記憶が呼び起こされたり。消息不明だった旧友の1行の添え書きに安堵(あんど)する場面も。「年賀状あるある」をうなずきながら読んだ

▼政府の「Go To トラベル」が全面停止となり、人の動きが止まって、ひっそりと迎えるコロナ禍のお正月。古里に帰らない人たちに年賀状が見直されているという

▼帰省に代わって何をしたいか。富士フイルムが子育て世代に尋ねたところ、「家族写真付き年賀状を送る」がトップだった。メールやテレビ電話を上回る。実際、賀状の注文は好調だという

▼人との接触が制限される時だからこそ、一手間かけて「元気だよ」と伝える。新しい年こそは再会できる日が来ることを願って、はがきに向かう。子や孫の笑顔を受け取り、目尻を下げる光景があちこちで見られたらいい

▼かくいうわが身。頂いてから返信する怠け癖を改めなければと準備したものの、いまだに手付かずのまま。「人並み」が難しいと言っている場合ではない。今年もあと3日。ペンを走らせねば。(大門雅子)