人気アイドルがロケをすると、アイドルと同じ状況で写真を撮りたいと、ファンが場所を特定し、一気にロケ地に押し寄せるー。2014年、「嵐」が出演した航空会社のCMをきっかけに、そんな現象が人口350人の沖縄の小さな島でも起こった。あれから6年。島はいったいどうなったのだろうか。

きっかけは2014年のCM

 「あの小さな岩が2つ重なると・・・」(大野智さんのセリフ)
 「ハートに見える!」(相葉雅紀さんのセリフ)
 

 2014年の春に放映されたCMは嵐の5人がハートに見える岩「ハートロック」を見つけるという設定で始まる。CMでは場所は明かされていない。

 スポットライトがあたったのは、沖縄県の今帰仁村にある古宇利島。「ハートロック」と呼ばれる岩を当時の村の観光協会のメンバーがロケ地にとプッシュしたことで撮影が実現した。

ハートロック=今帰仁村古宇利島

  古宇利島は那覇空港から車でおよそ1時間半。沖縄本島からは「古宇利大橋」という橋が架かっており、車でアクセスすることができる。産業はさとうきびやかぼちゃ、すいかの生産や漁業が中心だ。

 2014年にCMが放映されると、ハートに見える岩を一目見ようと嵐ファンが一気に押し寄せた。当時地元の人たちも全く想定していなかった事態。村の観光協会によると、「1日に600台の車が入ってきた日もあり」、島への注目度は一気に高まった。現在でも年間70~120万人もの観光客が訪れていると言われている。

 今帰仁村出身の観光協会職員、金城卓美さん(43)はCM放映から6年たった今もテレビなどから「古宇利島で撮影したい」と年に約50件の撮影依頼があるとし、「CMをきっかけに観光客の目的地の一つになった。お金をかけずにPRできたのはよかった」と話す。嵐効果は絶大だった。

【写真】今帰仁村などが発行する村の魅力を紹介するガイドブック

6年たって・・・「嵐がロケした場所」から「パワースポット」に

 金城さんによると、今はもう嵐を目的にハートロックを見にやってくる人はほとんどいないんだとか。
「訪れた人たちがハートロックを撮った写真をSNSで広めてくれたおかげもあり、ハートロックは嵐ファンじゃない方への認知度も高まりました。人気ブロガーの発信もあってか、インバウンドのお客さんも増えたんですよ」(金城さん)。今では沖縄観光ルートの一つとして定番化している。

 古宇利島は昔の呼び名「クイ島」から発展し、別名「恋島(くいじま)」とも呼ばれる。恋の島ということもあり、ハートロックは「嵐がCM撮影した場所」ではなく、「パワースポット」と化していた。

 筆者が取材した12月半ば、愛知県から来たという30~40代の女性グループに訪れた目的を尋ねると、「パワースポットと聞いて前から行きたかった」と話してくれた。過去に嵐がここでCM撮影をしたことを知っているか聞くと「全く知らなかった」と驚いた様子だった。

【写真】「嵐CM現場」と書かれた駐車場を案内する看板=今帰仁村古宇利

受け入れ体制が整わないまま・・・ トラブルも 

 訪れる観光客は増えたが、島はキャパを超えていた。2014年当時、浜付近には多くのレンタカーが押し寄せた。島の人たちの話によると、「1日に1件は事故があった」という。民間の駐車場もいくつかできた。だが、金城さんは「訪れる人数に対し、(民間業者が作った)トイレの数が見合っていない。付近に住む地元住民から保健所に臭いに関する苦情が寄せられるなどトラブルもあった。整備については課題に感じている」と明かす。

 同様のケースは嵐のCM放映から4年後の2018年にも起こった。女性アイドルグループ「TWICE」が村内のビーチでミュージックビデオ(MV)を撮影。MVが放映されると、場所が明かされていなかったにも関わらず、アイドルのファンたちが撮影場所となった今帰仁村内にある「赤墓ビーチ」に押し寄せた。もともと駐車場など整備がされていない知る人ぞ知るスポットだ。

 付近の土地の所有者が民営の駐車場を立ち上げたが、駐車場の利用方法などを巡り、訪問客とのトラブルが頻発。インターネットのクチコミでは海の美しさを評価する声がある一方で、駐車場トラブルに触れた低評価も見られた。金城さんは「ビーチの認知度が高まったのはよかったが、クチコミで『もう二度と行きたくない』などと書かれ、マイナスのイメージもついてしまった」と嘆く。

TWICEが撮影した「赤墓ビーチ」=今帰仁村内

 観光協会には村内の美しいビーチでロケをしたいとの希望から、今でも年間約100件の撮影依頼がやってくる。金城さんは「過去にこうしたトラブルに発展したケースがあるので、今は村営のしっかりとした駐車場があるビーチを撮影場所として案内したり、場所は明かさないでほしいと依頼したりすることもあります」と話した。