木村草太の憲法の新手

[木村草太の憲法の新手](143)2021年の政治課題 コロナ対策 抜本改定必要 緊急事態宣言の要件も

2021年1月3日 09:41有料

 2020年から引き継がれた政治課題は多い。新型コロナ対策は、その筆頭だろう。

 まず注目すべきは、政府対策本部の基本的対処方針だ。これは、新型インフルエンザ等対策特措法18条に基づき決定される対応の基盤だが、昨年5月25日に定めた方針は、その後、改定されていない。しかし、5月以降も、さまざまな状況変化があった。政府対策本部自身も、8月末に「今後の取り組み」として、「検査体制の抜本的な拡充」等、新たな取り組み目標を決定している。9月には、政府対策本部長たる首相の交代もあった。そろそろ、基本的対処方針を抜本的に改定すべきだろう。

 次に、特措法の見直しについて。政府は、緊急事態宣言下の休業要請について罰則・補償を新設すべきかを検討しているが、それにとどまらず、緊急事態宣言制度そのものの整理も必要ではないか。

 特措法は、対象感染症につき、(1)新型インフル等の発生事態(14条)と(2)緊急事態(32条)の2段階を設ける。このうち、(2)緊急事態を宣言することは、昨年4~5月の大規模ロックダウンを想起させるため、例外的かつ強力な制度と理解される傾向がある。菅義偉首相も、緊急事態宣言を最後の切り札のように扱い、発令に慎重な態度をとっているようだ。

 しかし、条文によれば、緊急事態宣言の発令要件は、対象感染症の「全国的かつ急速なまん延」または「そのおそれ」がある事態として「政令で定める要件」を満たすときだ(32条1項)。政令(特措法施行令)は、感染「経路が特定できない」患者等が確認された場合(6条2項1号)、または、「感染が拡大していると疑うに足りる正当な理由のある場合」(同2号)であれば発令すべしとする。

 また、宣言の主たる効果は、都道府県知事に、地域の実情に応じた外出自粛や休校・休業の要請権限を与えるもので(特措法45条)、必ずしも対象地域を一律にロックダウンさせるわけではない。

 これを今回の事態に素直に当てはめるとどうなるか。昨年2月以降、大都市を中心に、感染経路不明の患者が途絶えることなく確認されており、時短営業等の要請が必要な事態は続いていた。条文上は、2月から現在に至るまで緊急事態宣言が続いていてもおかしくはない。

 とはいえ、発令に慎重になるのも理由がないわけではない。現行法は、事態を、(1)発生事態と(2)緊急事態の2段階に分けるのみで、(1)と(2)の間や、(2)を超える宣言は出せない。緊急事態宣言を出し続ければ、さらに警戒を強める必要が生じた時に、メッセージを出しにくくなる。

 では、どうすればよいのか。新型コロナウイルス感染症対策分科会は、状況と必要な対策に応じ、四つのステージを区分する。これを法律に取り込むのが合理的だ。

 その場合、段階が上がるにつれて、罰則などの強い措置が規定されることになろう。ただ、強い措置を取る際に、目的が曖昧では、乱用の危険が高まる。また、措置が適切か否かも、目的に照らし合わせなければ評価しようがない。強い措置をとれるような法改正をするならば、同時に、目的を明確にすることを要求する条文を盛り込むことが不可欠だ。

 (東京都立大教授、憲法学者)=第1、第3日曜日に掲載します

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