隠れ家のような空間も
那覇市の住宅街にある赤嶺さん(40)宅は、大きな赤瓦屋根が目を引く木造2階建て。洋風な室内には、隠し扉などの遊び心もある。家族5人が地域と交流しながら暮らす。(出嶋佳祐※(注=祐はへんが「示」でつくりが「右」)

子供たちが即興バンド
赤嶺さん宅
木造/自由設計/家族5人+留学生1人
大きな赤瓦屋根に灰色がかった板壁。周囲の瓦屋根ともよくなじみ、昔からそこにあったかのような赤嶺さん宅。
そのたたずまいから、沖縄そば屋と勘違いして訪れる人もいる。そんな時、赤嶺さんは「コーヒーくらいなら出せますよ」と、明るくもてなすこともあるという。その結果、「地域の人と仲良くなりました」。
中に入ると印象がガラリと変わる。公民館のように広い玄関土間から見通せるLDKは、壁面に淡いピンクのしっくい塗料やタイルが施され、「洋」の雰囲気が漂う。
物が少なく、すっきりした空間は「隣の広いウオークインクローゼットのおかげ」と夫人(39)。洗濯機や乾燥機も同じ部屋にあるため「リビングに洗濯物が置かれることがない。こんなに片付いた状態が続くなんて」と驚く。
見上げると、梁(はり)の見える高い天井が吹き抜けとなり、3人の子供たちが遊ぶ2階のプレイルームとつながる。時折、さまざまな楽器が置かれた音楽室の小窓から「俺ピアノやる」「じゃあ俺はドラム」と、長男(9)が友達と楽しむセッションが聞こえてくることも。キッチンに立つ夫人は「音はなんとも言えないけれど、かわいいですよね」と、ほほ笑む。


本棚に隠し扉
もともと同じ敷地で、親から相続した築45年ほどの平屋に住んでいた赤嶺一家。老朽化が進んできたことから、建て替えることにした。
そこで、同じ保育園に子どもを通わせていた建築士に相談。夫婦は「よく知っていたので話しやすく、むちゃなこともどんどん伝えました」。
そのためか遊び心も満載だ。ゲストルームの扉は隠し扉のように本棚と一体化し、音楽室は1階書斎の上部にある小さな入り口からしか入れない。赤嶺さんは「隠れ家のような空間や、昔やってた楽器を再開するための理想のスタジオがほしかった」と話す。
住み始めて約1年。夫婦は「人を呼びやすいし、全部の部屋をうまく使えている」と満足そう。一家の形にぴたりと合った家だからこそ、住みこなせているのだろう。

ここがポイント
機能集約しオープンに
「せっかく沖縄で建てるんだし、昔ながらの沖縄の家がいい」「バーカウンターもほしい」など、住まいに対して多くの夢を抱いていた赤嶺夫妻。そこで建築士の伊佐直哉さんは「夫婦がオープンな性格ということもあり、各要望を地域に開く形でまとめていくことを提案した」と話す。
例えば玄関は、伝統的な住宅の縁側のような、幅広の土間空間に。書斎は玄関の土間を延長した場所に配し、バーカウンターをその外に設けた。実際、外のカウンターでホームステイ中の留学生が朝食をとったり、書斎で夫人が英会話教室を開いていたこともあるという。
さらに、それらがある場所を「パブリック」スペースとし、そこから奥に向かってLDKを「セミパブリック」、寝室やウオークインクローゼット、サニタリーのある「プライベート」と、空間を分割。公私のメリハリをつけ、オープンな中にも私的な空間を確保した。
また、1階の壁はしっくいの塗料、建具はラワンなど、シンプルな材料を使ってコストを抑えた。さらに2階壁面は、構造用合板がそのまま表に出ている。「棚を取り付けたり、色を塗ったり、自分たちで好きに使えるようにした」
外壁は施主がメンテナンスしやすいよう板張りに。板は、水が切れやすく、メンテナンス時も一人で押さえながら作業できるよう、あえて縦張りにしている。
そのほか、床下は高さ70センチを確保したことで、風が通りやすいだけでなく、点検もしやすくなっている。犬走りも大きく取り、蟻道ができたらすぐに分かるという。






[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人、留学生1人
敷地面積:320.68平方メートル(約97坪)
1階床面積:95.23平方メートル(約28.8坪)
2階床面積:57.83平方メートル(約17.5坪)
建ぺい率:31.31%(許容60%)
容積率:47.73%(許容200%)
用途地域:第一種中高層住居地域
躯体構造:木造軸組構法
設 計:(株)一級建築士事務所STUDIO MONAKA(uzumaki)伊佐直哉
施 工:(有)友建産業 外間文雄
電 気:喜友名電気
水 道:与儀工業
◆問い合わせ:
(株)一級建築士事務所STUDIO MONAKA
電話098・851・7711
https://studiomonaka.com/
※週刊タイムス住宅新聞1822号(2020年12月4日発行)紙面より転載