慶良間諸島で昨年末以降、米軍機の異常な低空飛行が続き住民を不安に陥れている。

 米軍は、嘉手納基地所属の特殊作戦機MC130によるものと認め「これまでも実施してきた典型的な飛行訓練」と強調した。座間味村によるとこうした訓練は1年以上前から目撃されているという。

 国内を飛行する航空機は安全のため、航空法により、離着陸時を除いて人家の密集する地域では最も高い障害物から300メートル以上、人家のないところでも150メートル以上の高度で飛行する必要がある。

 住民が「フェリーに突っ込んでくるかと思うほどの高さと角度だった」と話すほどの低空飛行は、自衛隊機も含めできないのが原則だ。だが米軍機は、日米地位協定実施に伴う航空法特例法により、最低安全高度の適用から除外されている。

 慶良間諸島は米軍の訓練区域外だが、政府は区域外で米軍が連絡なく飛行訓練を行うことを一般的に認めている。地位協定の合意議事録には、米軍が区域外でも航空機の離着陸や操作を行えるとある。

 1980年代以降、米軍の低空飛行は全国各地で頻発しており、騒音被害だけでなく墜落事故も起きている。米軍は99年1月の低空飛行に関する日米合意の中で、訓練の際は日本の航空法と同一の規制を適用していると表明したが、慶良間の低空飛行は、米軍が規制を全く守っていない現状をはっきり示した。

 国内どこでも事前通告の必要なく、最低安全高度以下で米軍機の飛行が許される現状では住民の安全は守れない。

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 ドイツとイタリアは、日本同様、敗戦を経て米国と同盟関係を結んだ国だが、米軍の運用は全く異なる。

 県が2018年両国で行った調査によると、ドイツでは空域演習には前日までの予約が必要で、最低高度などもドイツ法が適用される。国防相が同意しない限り施設外での訓練は行われない。イタリアでは基地内にいるイタリア側司令官の許可がなければ米軍は活動できない仕組みだ。

 このほか英国も米軍の活動すべてに国内法を適用している。問題は、主要な国の中で日本だけが自国の空を管理できない異常さにある。

 岸信夫防衛相は記者会見で飛行を問題視しない考えを示した。ただでさえ沖縄には広大な米軍施設と訓練区域が存在し、周辺には臨時の訓練空域も頻繁に設定される。その上なぜ慶良間での訓練が必要か。問いただしもしない日本政府の姿勢はおかしい。

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 米軍訓練をやりたい放題のまま放置しては、住民の生命と暮らしは危険にさらされるばかりだ。少なくとも訓練区域外で危険な低空飛行は行わない、どうしても必要なら住民への注意喚起のため事前通知する、との合意を日米両政府で直ちに交わし、住民の不安を当面緩和すべきだ。

 その上で、航空法などの国内法規を米軍にも適用することが主権国家として不可欠だ。ドイツやイタリアでは国内法適用以降も米軍の運用に大きな問題は生じていない。住民の安全のためにもためらうべきではない。