■苦難は必ず終わると信じて

 ー大学でも非常勤講師をしているようですが、若者たちと接する中で感じることを教えてください。

 愛香さん「大学では毎週授業があります。新型コロナウイルスの影響でオンライン授業ですが、オンラインって、やりにく~い。対面で授業すると、息遣いが伝わるし、学生の反応も違う。カミングアウトして授業をするには、いくら慣れているからと言ってもやっぱり緊張する。対面だと、その緊張をしっかり学生が受け止めてくれる。それがオンラインの授業だと、ほとんどの学生は顔を出していないので、どう受け止めてくれたか僕には分からないんですよ」

 ーコロナ禍で若者のメンタルも心配されていますね。

 「一つ言えるのは、苦難は必ず終わるということ。例えば、いじめられている人に対して言う3つの言葉の一つが『必ず終わるから』という言葉なんですよ。ずっといじめられている人は、これが普通なんだと思ってしまう。これが続くんだと思ってしんどくなるが、今の状態は普通じゃないんだよ。異常事態なんだよと伝える。今、簡単に乗り越えられなかったとしても、必ず終わるからという思いがあります。コロナ禍で、このままストレスがたまっていくばかりで、これが一生続くんだと思っている人には『これは異常事態であって、必ず終わるから』と。少なくとも僕は、必ず終わると信じています」

 ーコロナ禍で格差や差別が広がっている問題もあります。

 「大学の授業で差別の問題も取り上げますが、割と多くの学生が『私は差別をしません』という反応です。でも授業を丁寧にやっていく中で、私は差別をしていたんだと気付かされていく。そうすると、学生がしんどくなるんです。本気で社会のさまざまな問題に向き合っていくとね。自分が楽な社会であっても、ある人にとってはものすごく苦痛な社会かもしれないと感じ始める。相手にとって自分は苦痛な社会を温存する側にいるんだということに気付いた時に、向き合うのをためらう学生も出てきます。社会を変えていきたいという学生がいる半面、私は社会を変えていく勇気はありませんという反応も出てきます。でも、私にはできませんという反応もすごく大事だと思います。あ、この学生は向き合ったんだなと感じます。今気がついたことが、あと5年、10年たって、いろんなことに気がつく要素を学んでいるはずです」

 ー沖縄の現状について思うことはありますか。

 「沖縄ではカミングアウトしている同性愛者が、すごく少ない感じがしています。沖縄出身者同士、あるいは片方が沖縄出身者の同性カップルは、人前で手をつなげない。あるカップルはデートするために、わざわざ飛行機に乗って東京まで来る。一昔前の話かもしれませんが、ある人は一緒に航空チケットを取ると、どこからバレるか分からないので、別々にチケットを取って席も離して飛行機に乗ると言っていました。地方特有のバレては生きてけないという恐怖感。それに輪を掛けて、沖縄の人はみんな知り合いみたいな小さな島の意識から、バレたくない、カミングアウトしたくないという気持ちなんだろうなと感じます。僕が沖縄にいる間、一人も同性愛者は知りませんでしたから。僕も命がけで隠していました。今でこそ、僕はカミングアウトして活動しているので、昔の友だちが実は僕もそうだよと言ってくることもあります。すごくカミングアウトしにくい地域なんでしょうね」

 「かといって、沖縄は同性愛者が他の都道府県より少ないというわけではない。カミングアウトはしていないが、同性同士の恋愛はある。沖縄はHIV感染者やエイズ患者も人口の割合で見れば、全国でも多い地域。啓発がしにくい場所で、みんな人ごとだと思っているかもしれないです」

■新基地建設への抗議に参加

 名護市辺野古の新基地建設に反対して、官邸前で抗議行動などにも参加しているようですね。

 「防衛省や官邸前では毎月の行動に参加してますが、それとは別に国が辺野古沖でのボーリング調査に乗り出した2004年4月から、前髪の一部分を伸ばしています。辺野古の座り込みが終わるまでは1秒も忘れないために何ができるかな、と考えて。行きつけのゲイバーでは、愛香ちゃんの“辺野古髪”と言われています。面白いことに、店の常連客の皆さんは辺野古のことがニュースに出ると、僕の髪を思い出し『人ごとじゃなくなった』って感じるそうです。親しい友人が辺野古のことで苦しんでいることを思い出してくれるそうです。ちょっと面白いアピールになっていますね。僕の前髪を見て辺野古を思い出す。辺野古を見て僕を思い出す」

 ー来年は沖縄が日本復帰して50年になります。今、愛香さんの名前の由来にある平和な沖縄になっていると思いますか。

 「施政権が返還して50年になっても小さな島に米軍基地が集中しています。辺野古の埋め立ても多くの県民が反対しているのに、国が強行している。一緒に抗議行動するヤマトの人たちの中には、『日本全体で民主主義が残っているのは沖縄だけ』って言う人もいます。沖縄が独立したら、日本は完全に民主主義を失うので、沖縄は日本を見捨てないで欲しいという人がいました。沖縄を踏みにじっている側からすれば、沖縄なんて独りで生きていけないだろうとみている人もいるかもしれないですが。沖縄が日本や米国の植民地であってはいけない。今も変わらない状況を見ると、南極みたいにどこの国でもない沖縄として生き残る方法はないかなと思ってしまいます」

 「沖縄の経済や雇用問題をはじめ、子どもの貧困など全国ワーストって言われる課題もまだまだ多いですよね。離婚率も高いですが、それに関してはワーストとは言いたくない。たまたま、高いとしても、ベストでいいのではないかと思います。離婚したくてもできない人がたくさんいる社会の中で、ある意味健全なことだと思っています。子どもの貧困は別要素として考えないといけませんが、1人で生きるということが選べる沖縄、1人でも安心して生きていける沖縄、1人でも安心して子育てができる沖縄になったら、めっちゃいいですよね。そうしましょう。安心して生きていける沖縄を目指しましょう」

【プロフィル】たいら・あいか 1968年8月、那覇市生まれ。日本キリスト教団川和教会(横浜市)牧師。農村伝道神学校(東京)を卒業後、日本で初めて男性同性愛者であることをカミングアウトした上で、牧師として正式任用される。立教大や桜美林大の非常勤講師のほか、セクシュアル・マイノリティ・クリスチャンの集い「キリストの風」集会代表、カトリック・HIV/エイズデスク委員、平和を実現するキリスト者ネット事務局代表などを務める。