政府は、最短で2022年度から地方国立大の定員増に踏み出す。進学や就職を機に地方の若者が都市部へ流出するのを食い止め、東京一極集中是正につなげる狙い。ただ少子化による学生減少で地方大の経営環境は厳しさを増しており、国立大に学生を奪われる形の私立大からは不満の声が上がる。政策への評価は二分したままだ。

 地方国立大の定員増に向けた想定スケジュール

▽危機感

 「若者の地方定着を図るため、魅力ある学びの場をつくり、地域の産業振興と人材育成を推進する」。政府は昨年12月に閣議決定した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の改定で定員増を盛り込んだ。少子化を理由に認めていなかったが、方針転換した。

 対象は東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)以外の国立大。地元産業界や他大学との連携など、文部科学省が定める要件を満たす大学を特例として認める予定だ。

 転換の背景には、止まらない一極集中への危機感がある。企業の地方移転や個人の移住促進に取り組んできたが、19年の東京圏への人口流入を示す「転入超過」は14万6千人(外国人含まず)にまで拡大。このうち15~24歳が70%超を占め「若者に的を絞った対策が不可欠」(政府関係者)と判断した。

▽期待

 文科省内には18歳人口の減少に加え、公私立大の経営への影響も大きいことから「安易に定員増を認めるべきではない」(幹部)との慎重意見もあった。しかし萩生田光一文科相は、閣議決定に先立つ政府の会議で「地域に必要な大学はどのようなものかしっかり議論した上で、果たすべき役割があるなら認める」と発言。地方創生の観点から賛同した。

 国立大側はこの決定を歓迎している。地方では大学進学者の受け皿が都市部に比べて少なく、人材流出が悩みだ。大学が2校の島根県では、入学定員計約1600人に対し、大学に進学する若者は約2800人。流出を食い止められていない。

 島根大の秋重幸邦理事は「県内産業が必要とする人材が十分に育成できていない」と語り、定員増に期待を寄せる。国立大学協会も評価の姿勢を示した上で「費用は国がしっかり予算措置してほしい」と注文を付けた。

▽不信

 一方、私立大の受け止めは厳しい。学生数減少を背景に約3割が定員割れするなど、とりわけ地方の中小私立大は経営環境が悪化。地域によっては国立大の定員増が死活問題となりかねない。

 約400校が加盟する日本私立大学協会は、地方の私立大を卒業した若者は地元で就職する割合が高いと指摘。「地域人材の定着で中心的な役割を担う私立大を、むしろ積極的に支援すべきだ。拙速な定員増は高等教育全体の在り方に混乱を来す」と反発する。

 政府が大学運営に横やりを入れることへの不信感も根強い。折しも、東京一極集中是正を目的に18年度から10年間、東京23区の大学の定員増を規制する法律が施行されたばかりだ。

 関東地方の大学が比較的多く参加する日本私立大学連盟は、東京への人口集中が加速する状況を踏まえ「23区規制による集中是正効果は、ほぼないと言ってよく、規制は見直すべきだ。政策効果の検証とエビデンス(証拠)に基づいて議論してほしい」と訴えた。