社説

社説[緊急事態宣言拡大]泥縄式対策から転換を

2021年1月14日 07:05

 政府は新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象に栃木、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の7府県を追加した。発令地域は首都圏4都県と合わせ計11都府県となり、関東から九州までの広域で感染に歯止めがかからない深刻な現状が浮かび上がる。

 菅義偉首相は、先週の記者会見で、大阪などは感染者が減少傾向にあるとし、現時点で発令する状況にないとの認識を示していた。感染予測をする上で不確実な要素が多いとはいえ、わずか1週間足らずで重要な判断が覆った。見通しが甘かったと言われても仕方ない。

 2度の再発令は、知事らの要請を受ける形で、その数日後に行っている。他にも発令要請を検討中の県があり、全国的に広がる可能性もある。政府の「小出し」の対策で十分な効果が上がるのか不安が残る。

 これまで継続するとしていた中国や韓国など11カ国・地域とのビジネス関係者の往来も、一時停止に方針転換した。対応が後手に回っている感は否めない。

 菅首相は「(発令の)1カ月後には必ず事態を改善させる」と決意を示すが、果たしてその通りにいくだろうか。

 西村康稔経済再生担当相は「国や自治体、事業者、国民が一体となって取り組めば、必ず感染者数を減少傾向にできる」との認識を示す。感染急拡大の危機感が共有されなければ、絵に描いた餅になりかねない。そうならないためには泥縄式の対策から転換し、国民の胸に響く明確なメッセージを政治が出す必要がある。

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 政府は来週召集される通常国会に、新型コロナ特措法に基づく休業、時短要請に強制力を持たせるため、罰則と財政支援を盛り込んだ改正案を提出する。

 現行法は、要請に応じない事業者の店名公表や行政処分に当たる休業指示はできるが、罰則はない。改正案は要請に応じない場合、行政罰の「過料」を科すという。

 さらに、感染症法の改正も検討し、入院を拒否した感染者に対し、1年以下の懲役または100万円以下の罰金を規定する方向で最終調整している。

 感染抑止に向けて、対策の実効性を高める必要はある半面、私権制限が広がることへの懸念は根強い。政府の感染対策が遅れたために、国民の基本的人権の制約にしわ寄せが及ぶのであれば、政治の責任は重い。

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 沖縄でも累計感染者数が6千人を超えた。昨年末から22日間で約千人増えるなど、感染拡大が収まる気配は見えない。医療提供体制の逼迫(ひっぱく)も依然として続く。

 県立八重山病院は、新型コロナ入院患者の増加に対応するため、コロナ以外の重症患者を本島内の病院に搬送する方針を明らかにした。

 危機的な状況を乗り越えるには、国民一人一人の心掛けと行動変容が不可欠だ。「コロナ慣れ」をいかに防ぐか。緊急事態宣言の有無を問わず、命を守る自発的行動を肝に銘じたい。

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