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【深掘り】利用を自粛 消毒が負担 人手も不足 コロナ第3波に介護施設が危機感

2021年1月19日 15:30

 2021年度の介護報酬改定は感染症や災害への対応強化が柱だ。介護現場は昨年、新型コロナウイルス感染症による利用控えや経費増加で経営を圧迫された。回復傾向だったところに感染「第3波」が襲来。事業者は「同じような状況は避けたい」と危機感を抱いている。

 新型コロナ対策でテーブルを消毒するデイサービスの職員(右)=1月、仙台市(こーぷ福祉会提供)

▽大幅赤字

 「今年前半にワクチンでコロナが落ち着かないと、小さな事業所は厳しい」。仙台市内で通所介護(デイサービス)や訪問介護の事業所を運営する社会福祉法人こーぷ福祉会の吉島孝理事長はため息をつく。

 昨年は春から夏にかけて、利用控えがあり、デイサービスや訪問の利用が落ち込んだ。利用者は戻りつつあるが、感染防止で全員前向きに座る「教室形式」にしたため、利用者数を制限している。衛生用品の高騰で出費も増え、20年度は大幅に赤字だ。

 職員の負担も増加。デイサービスでは、送迎や入浴で誰が一緒になったか常に記録し、作業ごとに消毒が欠かせない。さらに訪問介護のヘルパーは常に人手不足。吉島さんは「この状況が、あと1年続けば閉めることを考えざるを得ない事業所もある」と話す。

 東京商工リサーチによると、20年の介護サービス事業者の倒産件数は過去最多となった。今回の改定では感染症や災害で利用者が急減した場合、報酬を上乗せすることになったが、吉島さんはコロナの収束を願う。「また昨年の春先のような状況にならないでほしい」

▽離職希望

 特別養護老人ホーム(特養)も、クラスター(感染者集団)の発生に神経をとがらせる。滋賀県湖南市の特養「美松苑」では、部外者の立ち入りを制限するなど対策を徹底。それでも富士原要一施設長は「食堂の食事など、一定程度、密になるのは避けられない」と話す。同じ系列の別の特養では昨年8月にクラスターが発生。入所者、職員計約40人が感染した。

 当時は美松苑から職員を応援に出して人手不足を乗り切ったが、超過勤務手当がかさんだ。クラスターが起きた施設で感染した職員の中には、後遺症や周囲への負い目といった精神的な負担から、最近になって離職を希望するケースも出ているという。

 「コロナで人件費も備品購入費も膨らんでいる」と富士原さん。一方で「介護報酬を上げると、結果的に介護保険料も高くなってしまう」と複雑な思いを打ち明けた。

 東洋大の高野龍昭准教授(介護福祉)は今回の改定について「災害やコロナによる減収への支援策は評価できる」と指摘。その上で「第3波で、さらに経営への影響が出る可能性があり、経費の補助など介護報酬とは別に事業者への支援が必要になる」としている。

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