罰則に偏った改正で、感染拡大に歯止めをかけられるのか。

 新型コロナウイルス特別措置法と感染症法の改正案が国会に提出された。

 どちらの改正案も罰則の導入が柱で、強権的に抑え込もうとする問題含みの内容だ。

 特措法には行政罰である過料が新設される。緊急事態宣言時に知事による休業や営業時間短縮の命令に従わなかった事業者に対し、50万円以下の過料を科せる、とした。

 緊急事態宣言の前段階で集中的な対策を実施するための「まん延防止等重点措置」も創設される。緊急事態を宣言していない地域でも、知事に命令権限を認め、違反した場合は30万円以下の過料を設けるという。ただ、「前段階」の措置についてこれまで議論がなく唐突感が否めない。

 どのような状況が「前段階」に当たるのかも曖昧だ。具体的要件は「政令」で定めるとされ、行政の裁量に委ねられている。国会への報告義務がないことにも疑問を感じざるを得ない。

 一方、罰則とセットと言いながら、時短などに応じた事業者への支援は不十分だ。国や自治体は必要な財政上の措置を「効果的に講ずるものとする」と明確さに欠ける。損失額に応じた補償は義務付けていない。これでは長引くコロナ禍で苦境にあえぐ事業者の理解を得るのは困難だ。

 共同通信社の全国電話世論調査では、罰則導入に48・7%が「反対」と答え、賛成を上回っている。政府は重く受け止めてほしい。

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 さらに問題なのは、刑事罰である罰金や懲役を盛り込んだ感染症法の改正案である。

 入院勧告を拒んだり入院先から逃亡したりした場合、1年以下の懲役か100万円以下の罰金を科す。正当な理由なく保健所の行動歴調査を拒否したときも50万円以下の罰金という。行政罰とは異なり前科となる。

 ハンセン病家族訴訟の弁護団は「患者の人権を不当に侵害し憲法違反」と改正案に反対する声明を出した。罰則を伴う強制は「市民の恐怖や不安・差別をより一層助長することにもつながる」と懸念した。指摘はもっともだ。

 罰則を恐れて、自覚症状などがあっても検査を受けなかったり検査結果を隠したりすれば、感染抑止はかえって困難になり逆効果となる。

 そもそも入院を希望していても病床が足りず、自宅療養を強いられている感染者が大勢いる。入院を拒んだり病院から逃げたりした人が何人いるのかも示さず、罰則ありきでは受け入れられない。

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 政府のコロナ対応は「後手」続きだと批判されてきた。罰則導入の法改正によって慌てて取り繕おうとしているように見える。

 政府は2月初旬のスピード成立を目指しているという。コロナ対策は急務だが、私権制限の強化は慎重でなければならない。ワクチン接種の準備もあるのに、違反しているかどうか確認する作業を自治体が担うのも現実的でない。

 改正案は見直すべきだ。与野党の協議で徹底的に議論を深めてほしい。