[辺野古共用基地 自衛隊 沖縄移駐50年](1)

共同訓練を終えた米海兵隊(中央)と陸上自衛隊の水陸機動団の隊員=2018年10月14日、鹿児島県・種子島

 自衛隊はずっと、沖縄の民意を注視してきた。尖閣諸島有事をにらむ水陸機動団に辺野古新基地を使わせたい。しかし、早い段階で表面化すれば建設そのものが頓挫しかねない。

 ある高官が漏らした。「希望しているが、落ち着かないと動けない」

 陸上自衛隊中枢の陸上幕僚監部(陸幕)は水面下で動いていた。新基地着工から2年さかのぼる2012年、ひそかにキャンプ・シュワブの現地調査に入った。同じ頃、水陸機動団の連隊一つを沖縄に置くことも決めた。

 交渉を進め、辺野古常駐が具体化したのは15年。当時の岩田清文陸幕長が在日米海兵隊のニコルソン司令官(在沖米四軍調整官)との合意にこぎ着けた。

 陸自幹部は「シュワブがいいのはオスプレイ、(水陸両用車)AAV7が使えて海兵隊と一緒なこと。条件がそろっている」と解説する。「日本版海兵隊」とされる水陸機動団にとって「本家」海兵隊との同居は悲願だった。

 新基地には1800メートルの滑走路があり、陸自も導入を進めるオスプレイが最大積載で離着陸できる。

 「海へのアクセスが良くて最高」と言う陸自幹部もいる。新基地には係船機能付き護岸が新設される。米軍の強襲揚陸艦が来ると議論を呼んだが、昨年の設計変更で241メートルに縮んだ。それでも海自輸送艦は接岸できるとみられ、水陸両用車の積み降ろしが可能だ。

 隣には、水陸両用車の上陸訓練ができる砂浜もある。軍事的には「理想の環境」となる。

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 一方、県民の反対が強い新基地は完全な「政治マター」で、元陸自幹部は「われわれが決められるわけではない」と語る。陸幕は政治状況を横にらみしつつ、完成までは水陸機動団を一時キャンプ・ハンセンに置くことも検討する。

 計画のこの部分が全国紙で報道された17年、防衛省内局幹部は陸自に激怒した。「優先順位を考えろ」。その後に控える新基地への移転まで露見すれば、県民の怒りに油を注ぐ。火消しに躍起になった。

 沖縄タイムスと共同通信が計画の全体像を報じた25日も、加藤勝信官房長官が会見で「報道のような計画は有していない」と否定した。一方、現場両トップの極秘合意については「詳細はちょっと承知していない」と微妙な言い回しにとどめた。

 計画は正式決定されていないだけで、陸自のほかに内局や沖縄防衛局が関与した。日本政府関係者によると、在日米海兵隊は米本国政府にも了承を得た上で合意している。

 ジャーナリストの布施祐仁氏は「文民統制を重視する米国では政府が決定し責任も取るが、日本はこれまでも政治が現場に責任を押し付け、問題化すると切り捨ててきた」と指摘する。

 「常駐計画について政治が説明責任を果たさず、報道で明るみに出たことで、沖縄の反発も強まるだろう。新基地建設も行き詰まっており、実現は不透明になったのではないか」と語った。(編集委員・阿部岳

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 自衛隊が沖縄に駐留を始めて50年目の年に、陸自が辺野古新基地に常駐する極秘合意が明らかになった。背景や沖縄への影響を探る。

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