【前編】新時代のオフィスレイアウト

[クラフトバンク株式会社ITmedia]

 2020年4月、日本政府より新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が発出されて以降、各企業で在宅勤務やテレワークの導入が進みました。多くのビジネスマンがこれまでとは異なる働き方に順応し、社会の「当たり前」が大きく変化しています。

 そのような中で浮かび上がるのが、「オフィスは必要なのか?」という問いです。

 数ある判断材料から、オフィスをなくすという答えを導き出す企業もあると思います。しかし、そのような決断は難しい企業がほとんどでしょう。オフィスをこの先も持ち続けるのであれば、変化し続ける時代の中で「オフィスにしか提供できない価値は何か」という問いについて考えることが大切です。

 本記事では、オフィスが社員から求められる場所であり続けるようにするための“空間デザイン”を、レイアウト例を元に紹介します。

 なお社員の検温や体調管理、空間の定期的な換気、除菌、マスクの着用など根本的な感染症対策は行っている前提で、これからのオフィスの空間デザインについて考察します。

<目次>

1.ABW時代、“社員から求められるオフィス”とは
2.社員がパフォーマンスを発揮できる場所を作る
3.出社率100%→50%のオフィスレイアウト例
4.感染症対策としてのレイアウト
5.オフィスだからこそ得られる体験を作る「仕掛け」
6.企業と従業員がメリットを享受できる空間へ

 

1.ABW時代、“社員から求められるオフィス”とは

 職種によって差はあるものの、コロナ禍をきっかけに「オフィス以外でも仕事はできる」ことが明らかになりました。

 これからの社会では、ABW(Activity Based Working)がより浸透していくと考えられます。働く人々は、仕事の内容によって、「時間」と「場所」を自由に選択する──すなわち、私たちが生きる空間、街全体が働く場所になりうるという考え方です。

 

 働く場所=オフィスに限らず、それぞれにとってベストな働き場を選んでいくということが、現実に起きています。自宅で仕事をすることも、カフェで仕事をすることもあるでしょう。「オフィスで働くこと」は「選択肢の一つ」なのです。

 そのような中で「オフィス」が提供できる価値とは何でしょうか。それは「自宅やカフェなどでは起こり得ない体験の提供」です。

 同じ会社に所属するメンバーとの交流、偶発的な会話や情報の共有は、オフィスという共通の場所だからこそ生まれるものです。文化の醸成や企業が持つアイデンティティーとは、人によって生み出され、人によって感じ取るものです。それらがエンゲージメントの向上や帰属意識の実感につながります。

 実際に社員がオフィスで一堂に会することがなくなったことにより、コミュニケーション機会の減少を実感している企業も多いのではないでしょうか。

 

2.社員がパフォーマンスを発揮できる場所を作る

 ABWの発想が浸透した社会では、社員に「オフィスに行く理由」つまりメンバーとの交流、偶発的な会話や情報の共有を提供できるオフィスを用意することが大切です。

 最近のオフィス縮小、オフィス移転におけるレイアウト変更の実例を見ていても、コロナ禍以前の来客目線のレイアウトより、「そこで働く社員目線での希望」が優先されています。

 今後もWeb会議システムの浸透により、来客は従来より少なくなると考えられるため、その分の予算やスペースを「いかに社員が快適に、パフォーマンスを発揮しやすい場所を作るか」に割くという傾向は続くでしょう。

3.出社率100%→50%のオフィスレイアウト例

 変化する社会情勢に合わせて、オフィスデザインは具体的にどのような改善ができるのでしょうか。面積は同じまま、スペースの使い方やオフィスの提供価値を最大化するような仕掛けを考えます。

Case 1:コロナ前のオフィス(出社率100%)

 

 デスクは規則的に、対面式で配置。必要なスペースを確保しつつも、できる限り無駄なく固定席を配置できるよう設計。一人あたりの占有面積は6平方メートルとし、座席数は92席確保しています。

 来客はもちろん、大人数での社内ミーティングにも対応できるよう、4~6人収容できる会議室が基本として準備されています。

 これまで一般的だったオフィスのスタイルですが、密になりやすいという課題があります。課題を解消し、さらに社員への提供価値を最大化するには、どのように変更することができるでしょうか。