[経済再興への道 コロナ禍の挑戦](3) 垣根を越えて
緊急事態宣言が明けた昨年6月。定額会員制のワーケーションサービス「Re:sort@OKINAWA(リゾート・オキナワ)」事業に参画するマッシグラが運営するシェアオフィス「ハウリブ」の電話が鳴り響いていた。「ワーケーションってどうすればいいの」「サテライトオフィスとして利用は可能か」「1日だけ利用したい」。電話、ホームページ、飛び込み-。あらゆる経路から問い合わせがきた。国の支援策「Go To トラベル」に東京が追加された10月以降は、毎月倍々で増えていった。
2018年に1号店を開業した社員わずか6人のベンチャー企業。「リモートワークしてみませんか」。金子智一社長自ら営業に回ったが、当初はどこも冷たい反応ばかり。だが、コロナでその風向きが一気に変わった。「ワーケーションへの理解が広がっている」と可能性を感じた。
■ゲームチェンジ
だが、販売は思うように伸びていない。ことし1月時点で会員数は50人程度。当初掲げた21年度末までの目標千人を大幅に下回った。発売2週間後の12月ごろから、都市部を中心にコロナ感染の第3波が広がったことが原因だった。JTBのグループ会社が、東京の企業へ売り込む計画だったが、興味を示していた企業も、モニターとしての参加を見送った。
「今こそ、ゲームチェンジのチャンスなんだ。考え方を変えてやり直せ」。1月中旬、JTB沖縄の杉本健次社長が、社内会議でハッパを掛けた。苦境に立たされる既存旅行社。現状を変えるには、ニーズの変化を捉えて短期間にサービスの設計、開発、提供、検証を繰り返す。100回中99回失敗しても、やるしかないというメッセージだ。
■可能性に期待感
「将来的には、離島で働き、那覇で遊ぶという形まで作りたいよね」。日本トランスオーシャン航空販売推進部の玉城豊チーフマネジャーの言葉に、JTB沖縄の石川憲事業開発担当マネージャーがうなずく。どうサービス内容を充実させるか。連携できるパートナーはいないか。県内在住者向けのプランは-。アイデアは尽きない。働く場所が自由になることで、広がる可能性にワクワクする。「まだ妄想」だが話は尽きない。
石川マネージャーの頭には杉本社長の「ゲームチェンジ」の言葉が巡る。コロナ禍だからこそ、発想を変えることができた。考えること、できることはまだある。「ワーケーションは取っ掛かり。5年後、10年後、沖縄で働き、沖縄に長く滞在することが当然となる世界をつくるんだ」
(政経部・川野百合子)=木~土曜日に掲載します。