政府は、新型コロナウイルスの緊急事態宣言を、栃木を除く10都府県で1カ月延長すると発表した。
新規感染者数は減少傾向にあるが、高齢患者や重症者が依然多く、医療体制が逼迫(ひっぱく)しているためだ。現状を考えれば、延長の判断はやむを得ない。
沖縄県は対象地域に入っていないが宮古島などで医療体制が逼迫しており、玉城デニー知事は県独自の緊急事態宣言を延長する最終調整に入った。
1月8日に始まった制約のある生活は2カ月間に及ぶことになる。「もう少しの辛抱」と耐えてきた人も多いはずだ。
長期にわたる不自由な生活は人々の心身をむしばみ、雇用と経済を直撃している。
懸念されるのは自殺者の急増だ。女性は過去5年で、小中高校生は統計のある1980年以降最多という深刻な状況だ。
経済への打撃も大きく、新型ウイルスに関連する全国の企業倒産件数は昨年2月から、わずか1年で累計千件の大台に乗った。
県内でも昨年の休廃業・解散件数が2000年の集計開始以来、最多に上っている。
菅義偉首相は1月の緊急事態宣言の際、「1カ月後には必ず事態を改善させる」と自信を見せたが、期待された結果を出せなかった。
国民に我慢を強いる延長期間中にこれまでの方法を再検証し、抑え込みへ、急ピッチで対策を講じるべきだ。
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政府は当初、「ウィズコロナ」をうたい、感染拡大防止と経済を両立させることに力を注いできた。
首相肝いりで、巨額をつぎ込んだ観光支援事業「Go To トラベル」は昨年末に全国一斉停止となり、再び停止継続が決まった。
政府は、状況が改善すれば期限前にも解除する方針を示しているが、急ぎすぎれば再々延長という事態になりかねない。
まずは感染を徹底的に抑え込み、経済活動を再開させたほうが、早道になるのではないか。
菅首相は会見で、緊急小口資金の限度額拡大や大企業非正規労働者に雇用調整助成金が活用されていない問題に対応する考えを示した。
ただ、これだけでは足りない。国民に自粛、時短営業を徹底してもらうためには、延長に見合った新たな追加の経済支援策を講じるべきだ。
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菅首相はワクチン接種を2月中旬に前倒しして開始する意向を示したが、諸外国に大きく後れを取っており、早急に体制を整える必要がある。 いまだ十分でないPCR検査の拡充も急務だ。
衆参両院の議院運営委員会に出席した菅首相は、与党幹部による銀座のクラブ訪問について「あってはならないこと。素直におわびする」と国民に謝罪した。
会見では「あらゆる方策を尽くし、私の全ての力を注いで取り組んでいく」との決意も示した。失われた政府への信頼を取り戻すためにも、言葉通り、全力でコロナ対策に当たってほしい。