[経済再興への道 コロナ禍の挑戦](4) 垣根を越えて

 那覇から北東へ約25キロメートル。勝連城跡や闘牛など自然、歴史、伝統文化が色濃く残る本島東海岸に位置するうるま市が、ワーケーションの受け入れ地として新たな事業に乗り出した。

 「コロナで打撃を受ける事業者支援に何ができるか」。2020年4月、市産業政策課の玉那覇謙太氏は思案を巡らせていた。国の地方創生臨時交付金で、ホテルや観光事業者への支援はどうか-。

 市の調べでは、県外観光客の市内での宿泊平均日数は、わずか0・7泊(19年度)で、観光地としては「下位打線」。沖縄観光が好調だった過去5年間でも、数値はほぼ横ばいだ。「観光が目的では、西海岸との差別化が難しい」。切り口を変えるべきだと感じた。

 同時期、市の企業誘致推進事業を委託している東京の事業者から「都心では密を避けてテレワークが浸透している」との連絡を受けた。観光を主目的にしない企業のサテライトオフィス誘致に可能性を見いだした。

■モニターツアー

 12月中旬、市はワーケーションモニターツアーを開催した。旅費などを補助し、参加者がインターネットを活用して仕事をするだけでなく、地域との交流の場を設けることが特徴だ。

 県外の中小企業の社員など約30人が参加。交流会に地域人材として参加したアンダカシー専門店龍華の新垣麻衣子代表は「アンダカシーを通して、沖縄の豚文化の歴史や文化を継承していきたい」と前のめりに語る。周囲にはウェブマーケターや物販業者など、これまで関わることのなかった異業種の面々。創業経緯、商品への熱い思いをぶつけた。

 経営や販売の悩みを打ち明けると、次第に販売拡大のアイデアが出た。その場で新しい事業や具体的な連携にはつながらなかったが、代表に就いてわずか1年弱の新垣代表にとって「一緒に考えてくれることがうれしかった」

■目指すは「共創」

 事業を受託し、プログラムを構築したプロモーションうるまの田中啓介プロジェクトディレクターは「ただ都会から来て働くのではなく、外からの人材と地域との化学反応を起こしたい」と力を込める。地域のファンになってもらい、互いに豊かになる、息の長い関係性づくりを狙う。目指すのは「共創」だ。

 ワーケーションで地域をどれだけ幸福にできるか-。地域との交流を通して、うるまを深く知ってもらい関係人口を増やす。将来的には、移住や企業誘致につなげる。観光の先を見据えた「100年後のうるまをつくる」。田中ディレクターは、手応えを感じている。(政経部・川野百合子)=木~土曜に掲載します。