「女は黙ってろ」と言っているに等しい時代錯誤の発言である。こうした価値観を持つ人に、「多様性と調和」をコンセプトとする東京五輪のリーダーは任せられない。

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が3日、日本オリンピック委員会(JOC)の評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と述べた。

 JOCが女性理事の割合を40%に増やす目標を掲げていることに対する考えのようだが、公的な場での発言に、一瞬耳を疑った。

 日本のスポーツ界は女性の進出が遅れ、国が指針を出して各競技団体へ女性役員の増加を求めているところだ。だがJOC、組織委とも女性の比率は約20%にとどまる。

 森氏はかつて会長を務めた日本ラグビー協会で女性理事が増えていることを例に、こうも語った。

 「女性っていうのは競争意識が強い。誰か一人が手を挙げて言うと、自分も言わないといけないと思うんでしょうね。みんな発言される」

 「女性を増やしていく場合は、発言時間をある程度規制しておかないとなかなか終わらないので困る、と誰かが言っていた」

 発言するのは競争ではなく問題意識や意欲の高さの表れである。発言規制はいかにも男性が話し、女性は聞き役に回るという世界にどっぷりつかってきた人の発想だ。

 五輪憲章は、人種や性別などによるいかなる差別も禁止している。

 問われているのはトップとしての資質である。

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 森氏の発言に対し、ツイッター上では「退任を求める」「絶対に黙らない」など抗議の声が相次いでいる。海外メディアも批判的に報じ、五輪のイメージは深く傷ついた。

 反響の大きさに驚いたのだろう。一夜明け、森氏は「不適切な表現だった。深く反省している」と謝罪し、発言を撤回した。

 ただ会見で記者に対し「あなたはどう思うのか」と居直ったり、質問を遮る場面もあり、反省の色はみられなかった。

 首相在任中の「神の国発言」や「有権者が寝ていてくれればいい」など、もとより失言の多い人である。少子化問題で「子どもを一人もつくらない女性の面倒を、税金でみなさいというのはおかしい」と言い放ったこともある。

 7年前、森氏を組織委会長に充てたのは当時の安倍晋三首相だ。そもそも「五輪の顔」にふさわしい人選だったのか。

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 評議員会で差別発言に誰も異論を唱えなかったことに、スポーツ界に根深く横たわる性差別を見る思いがした。

 相次いだ指導者によるハラスメントなどの不祥事、長年放置されてきたアスリートの性的画像問題も、性差別と無関係ではない。

 組織委を健全に運営していくには、性別や障がいの有無などにかかわらず、多様なメンバーが意思決定に加わることが大切である。

 硬直化した組織を変えるためにも、まずは女性理事登用40%を達成すべきだ。