[経済再興への道 コロナ禍の挑戦](6) 垣根を超えて
地域の人たちが市外から来た人と交流し、地域課題の解決や新しい事業を生み出す「共創」を目指すうるま型ワーケーション。事業を担当する市産業政策課の玉那覇謙太氏は、モニターツアー参加者との交流で手応えと共に課題を実感していた。「魅力を感じてもらえるソフト面の仕掛けはもちろん、仕事環境のハード面整備も必要だ」
もう一つの事業
ツアー開始前から、拠点整備の重要性は認識していた。県内全体では、テレワーク拠点の整備を支援する沖縄総合事務局の事業を活用し、2020年度内に少なくとも20軒の施設が増える予定。だが、うるま市内での採択は1件もない。
昨年10月上旬、市は新たに「経営多角化支援補助金」の公募を始めた。柱は2本。一つは、新型コロナで打撃を受けた市内事業者が経営を多角化する支援。もう一つが、テレワークやワーケーション需要を取り込む拠点の整備だ。
市外から来た人が快適に仕事できるよう、オフィス施設や高速Wi-Fiなど通信機能の整備に、最大250万円を補助する。
ホテル、喫茶店、観光施設、共同売店。テレワーク拠点として整備しようと申し込みが殺到した。想定以上の反響だった。事業を活用し、年度内には少なくとも6拠点が増える予定だ。
つながりに確信
採択された1社、市石川のコンサル未来(岡義昭代表)はコワーキングスペースや倉庫の貸し出し事業「未来ビジネス村」を展開している。19万8600平方メートルの広大な土地に、一戸建てタイプのレンタルルームや、自然の中で仕事できるガーデンデスクなどを備える。
1級建築士で建設会社も運営する岡代表が、2年ほど前から開発を進めてきた。採択を機に、さらに規模を拡大する考えだ。「目指すのは、どの職人にも出会える場所。若い人たちの独立や協業の拠点となれば」と始めた。
現在、県内外の15社が入居。沖縄自動車道の石川インターから車で3分という利便性もあり、建築関係以外にも、マリンレジャーや飲食、食に携わるNPO法人と、幅広い業種が集う。家族ぐるみの交流会や、コロナの情報を交換するなど「着実に垣根を越えたつながりができている」と、岡代表は確信する。
市が主催したモニターツアー参加者も利用した実績がある。短時間の利用だったが「ツアーで発信してもらえると、県外企業と知り合える可能性も広がる」と期待する。
「課題はあるが、市内全体での機運が高まってきた」。玉那覇氏は力を込める。地域を活性化する官民連携の取り組みは始まったばかり。芽吹きは目前だと感じている。(政経部・川野百合子)
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