新型コロナウイルスが猛威を振るい、県経済がかつてない打撃を受ける中、市民は危機からの再生を現職に託した。

 浦添市長選で自民、公明の政権与党が推す松本哲治氏が、県政与党の共産、社民、社大、立民などが支援する伊礼悠記氏を振り切り3選を果たした。

 緊急事態宣言下での異例の選挙で、松本氏が最優先すべき政策として訴えたのは「生命と暮らしを守るコロナ対策」。

 コロナ後の経済再生、生活支援を求める市民の切実な声を手堅くすくいあげた。

 待機児童解消や障がい福祉関連複合施設の建設など、子育てや福祉分野での2期8年の実績も評価された。

 市議選とのセット戦術も票の掘り起こしに効果を上げたといえる。

 浦添市政が抱える最大の課題は西海岸開発と那覇軍港移設問題だ。この二つは複雑に絡んでいるが、軍港の浦添移設を巡って県と那覇市、浦添市の3者は昨年夏「北側案」で合意しており、松本氏は「容認」の立場をとる。

 選挙戦では「西海岸開発は埋め立て面積を小さくした上で、米軍キャンプ・キンザー跡地と一体的に開発する」と主張。軍港移設を語る場面はそれほど多くなかった。

 「軍港ノー」を明確に訴えた伊礼氏の獲得票は、市民の懸念の表れともいえる。

 西海岸道路の開通で目の前の海の美しさに気付いたと言う人は少なくない。 

 松本氏には、合意形成に向けた丁寧な対応を求めたい。

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 県内の主要選挙では、玉城デニー知事を支える「オール沖縄」系候補と政府・与党が推す保守系候補との戦いが続いている。 

 先月の宮古島市長選に続き、浦添市長選でも菅義偉首相は自身の秘書を松本陣営に派遣し、支援した。来年秋の知事選を見据えた官邸の力の入れようが際立つ。

 投票日の3日前に、自民党県支部連合会が地元紙に松本氏をバックアップする意見広告を出したのも、危機感の表れだ。 

 緊急事態宣言中の銀座クラブ訪問や政治とカネを巡る不祥事、森喜朗氏の女性蔑視発言など菅政権には逆風が吹き荒れている。

 懸念していた浦添市長選で勝利し、知事選の前哨戦を1勝1敗に持ち込んだ。自民は県政奪還に弾みをつけたことになるが、国政の動向次第では何が起こるか分からない。

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 浦添市長選では、軍港移設を容認する玉城知事が、反対の伊礼氏を応援するという分かりにくい対応をとった。相手陣営はたびたびその矛盾を突いてきた。

 県議会でこの問題が取り上げられるのは確実で、県政野党は大きな追及材料を得たことになる。

 今年は選挙イヤーで、4月にはうるま市長選が控えている。さらに秋までには衆院選も実施される。

 オール沖縄内の亀裂をどのように修復し、一枚岩となって動いていくか。玉城県政は新たな荷物を背負うことになった。