[女性クライシス]

施設内の屋外スペースで体を動かす子どもと母親たち=1日、那覇市・地域子育て支援センターなんくる家

地域子育て支援センターの利用者アンケートに寄せられた主な声

施設内の屋外スペースで体を動かす子どもと母親たち=1日、那覇市・地域子育て支援センターなんくる家
地域子育て支援センターの利用者アンケートに寄せられた主な声

 2月初めの昼下がり、那覇市首里石嶺町にある地域子育て支援センターなんくる家には3組の母子が訪れていた。認可保育所に併設された屋内外のプレイスペースで、子どもたちは走り回ったりままごとをしたり。傍らで母親と保育士資格を持つ支援担当者が、近況を語り合いつつ見守る。

 「私や夫以外に息子を抱っこしてくれる人がいる。それだけで、ほっとした」。生後7カ月の長男とやって来た女性は、初めて利用した昨年9月を振り返った。

 北海道出身。夫の転勤を機に2019年4月に沖縄へ移り住んだ。第1子を帝王切開で出産したのは20年7月。全国で新型コロナウイルスが猛威を振るう中、里帰りはかなわなかった。初めての出産・育児で不安なのに、近くに頼れる親類や友人はいない。「誰かに私を気遣ってほしいし、『おなかの傷は大丈夫?』と聞いてほしかった」

 慣れない抱っこで両手首がけんしょう炎になり、急に悲しくなることが増えた産後1カ月ごろ、保健所に泣きながら電話をかけて窮状を訴えた。そのSOSを受け止めた保健師に連れてこられたのが「なんくる家」だった。

 母乳で育てないとダメ。夜はきちんと寝かさないと-。「こうあらねば」という子育てへの気負いは、さりげなく息子を抱きとめ親身に話を聞いてくれるスタッフや、自らの失敗談を笑い飛ばすママ友の言葉で和らいでいった。

 今では週2~3日利用する「常連」で「夫以外の大人と触れ合う大切な時間」と実感する。「私は保健師に相談してここに行き着いたけれど、そうでなければどうなっていたか。行政には定期的に母親たちに情報提供したり、困り事をすくい上げたりしてほしい」

■ステイホーム中の子育て

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴うステイホーム中の子育て状況を把握しようと、県内約50の施設でつくる沖縄・地域子育て支援センター連絡協議会は2020年8~10月、利用者アンケートを実施した。「子育てがしんどいと感じる」の問いに、回答した348人のうち33・6%に当たる117人が「はい」を選択。「子どもを叱る回数が増えた」は34・4%、「子どものストレス面が心配」は60・2%、「子どもを遊ばせる場所がなく悩む」は74・1%に上った。

 地域子育て支援センターは保育所などに併設され、主に未就学児と親が自由に遊べる場の提供や育児相談、サークルの支援を担う地域の子育て拠点。昨年の春と夏、県内で2度の緊急事態宣言が出され、学校の臨時休校や公園・公共施設の閉鎖が相次いだ際には、各地のセンターの多くも長期の事業休止を余儀なくされた。

 3歳と1歳の1男1女を育てる公務員の女性(36)は、第1子の育休中から那覇市の「なんくる家」を利用してきただけに、休止中は途方に暮れた。家にいると在宅勤務が増えた夫への配慮が必要な上、アパートには子どもの生活音を抑えるよう呼び掛ける通知が張り出され、肩身が狭かった。「迷惑を掛けたらいけない」と日中は弁当持参で子どもたちとひたすらドライブする日々。ささいなことでイライラし、夫との関係もぎくしゃくした。

 「なんくる家」施設長で、同協議会の石川キヨ子会長はアンケート結果を受け「コロナが親子の不安感や閉塞(へいそく)感を助長している状況、センターが果たしてきた役割の重要性を改めて感じた」と強調。「子育ての困り感に、いまだに世間では『親だから当たり前』『子育てぐらいで』と捉える風潮があり、声を上げられない、上げてはいけないと苦しむ人もいる。ここに来るゆとりのない親子がいることにも心を寄せながら、仕事をしている」と話す。

 1月20日から始まった3度目の県の緊急事態宣言。「なんくる家」はこれまでと異なり「1日4組、2時間めど。弁当持参中止」と利用制限を設け、従来通り週6日の開所を決めた。感染対策の責任を伴うが、石川さんは「命を助ける決断でもある」と力を込める。

 同様に開所し続けてきた本部町の地域子育て支援拠点「もとぶっこ」の仲田優子支援員は「一日中幼い子と向き合うお母さんは、大人同士の会話を求めている。ここに来て『よくしゃべったー』と心が軽くなってくれるだけでいい」と手応えを語る。中城村の子育て支援センターちゅらてぃーだの大城ゆかり支援員は、県外や外国籍の母親の利用も多いとし「特有の悩みもあるはず。コロナ禍でさらに困っていることがないか、対応を模索しながら活動している」と話した。(学芸部・新垣綾子)

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 新型コロナ感染拡大で、女性たちの雇用や生活が脅かされています。女性が抱える困難や支援者の奮闘に光を当て、誰もが生きやすい社会を考えます。