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驚異のテレワーク率「9割超」 営業利益16倍の企業は、生産性が「下がった」社員をどのようにケアしたのか

2021年2月15日 07:15

[山崎潤一郎ITmedia]

Zoomの画面越しながら、熱量が伝わる力強さで「フル出社体制に戻す理由がない」と言い切るのは、アステリアの代表取締役社長・平野洋一郎氏だ。東証1部上場で73人の社員(会社四季報より)を抱える同社だが、2回目の緊急事態宣言中のテレワーク率は97%に達する。昨年4月の緊急事態宣言後も、9割以上のテレワーク実施率を継続していたという。

 そんな「ほぼ」完全テレワーク体制を確立した同社だけに、本社オフィス(東京都品川区)のスペース半減は、当然の帰結だったのかもしれない。昨年12月、テレワークが常態化したことを理由に、それまでのオフィス床面積1140平方メートルの半分以上にあたる約610平方メートルのスペースから退去した。本格的なテレワーク体制に舵を切ったアステリアが、業務を円滑に進めるために実施している、さまざまな施策に迫った。

アステリア代表取締役社長・平野洋一郎氏。テレワーク成功の方法や就業方針について個別に相談を受けることが増えたという(取材はオンラインで実施)

生産性アップで営業利益は16倍

 一般的な不動産契約では、退去する場合、6カ月前に告知しなければならない。「昨年8月に退去を告知した。1月末~6月に実施したテレワークで生産性の向上が見られたことが大きい。さらに、テレワーク下の第2四半期には、創業来最高益を達成したこともあり、取締役会で全会一致で決定した」と平野氏は誇らしげに語る。

 テレワークに関する社内調査では、生産性について、47%の社員が「とても上がった」「上がった」と回答している。アステリアでは、その後もテレワーク体制を継続し、10月の調査では、その率は、55%まで上昇している。組織として、テレワークを円滑に推進するための施策を講じたことや、社員がテレワークに慣れたこともあるのだろう。

 
 

一方、10~11%の人は「とても下がった」「下がった」と回答している。これについて、平野氏は「会社に入って歴史の浅い人にこの傾向がある」と説明する。新しく入社した人は、社内の人的ネットワークが十分に構築されない段階でテレワークに突入することになったので、社内コミュニケーションに課題があったということであろう。

 そこでアステリアでは、新しく入社した人向けに次のような対策を実施している。

 まず、感染対策を万全に実施した上で、所属する部内の人々とリアルにミーティングを実施するという。一度、フェース・トゥー・フェースで言葉を交わしておけば、その後のオンラインでのコミュニケーションでも、意思疎通の円滑度が増すのだろう。

 また、オンラインでも、リモート会議ソフトを活用して「○○の部屋(同僚や上司の名前)」といった場所を設け、おやつタイムのような形で気軽に雑談できる環境を準備しているという。この「部屋」では、会話に参加しなくても、入室して会話を聞いているだけでもOKだそうだ。

 他にも対策を実施している。月次で、全社員がオンラインで一堂に会し、新人向けにインタビューを実施するそうだ。筆者であれば、緊張でカチコチになってしまいそうだが、Zoomの「ブレークアウトルーム」を利用し、参加者をランダムにグループ化、「仕事時のおすすめのBGMは?」といったカジュアルな話題のトークで花を咲かせるそうだ。平野氏は「オフィスでの立ち話のような偶発的な会話を実現している」と胸を張る。

 このような施策は、新人のためという表向きの理由があっても、最終的にそこに参加する既存社員間のコミュニケーションの円滑化にも寄与する結果になっているのではないだろうか。

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