父とも母とも、一緒に暮らしたことはない。大城大翼(だいすけ)さん(38)は沖縄県の宜野湾市喜友名で生まれてすぐ、叔母に預けられた。居心地がいいのは「お帰りなさい」が聞こえる友人の家。でも、夜には帰された。「俺は、要らない存在。なんで生まれてきたばー?」。温かい家庭に憧れて育った大城さんは今、足場の組み立て・解体プロの一級とび技能士として「沖縄吉村組」を束ねる。踏ん張ってきた根っこには「この人を裏切ったらいけない」という恩人の存在がある。(中部報道部・平島夏実)

 叔母の家で暮らしていた中学生の頃。叔母の古くからの友人に、俳優アーノルド・シュワルツェネッガーさんのように筋肉質な男性がいた。半分漁師で、半分土木作業員。大城さんを毎週ドライブや釣りに誘ってくれたが、ある日、別人のような硬い表情で訪ねてきた。

 「ちょっと来い」。男性のただならぬ口調に大城さんは身構えた。だが、男性は大城さんの肩にポンと手を置いただけ。見たことのない沈んだ目で「…お前がしっかりしないでどうする」と言った。...