県議会が全会一致で低空飛行訓練に抗議し、中止を決議しているにもかかわらず、岸信夫防衛相は「日米合意を順守している」と問題視しない考えを示した。

 住民の不安や懸念に向き合わない「米軍ファースト」の姿勢、思考停止に陥った血の通わない対応は、嘆かわしい限りである。

 それどころか政府は、訓練の必要性を強調し、積極的な容認に転じつつある。看過できない事態だ。

 昨年12月28、29の両日、米空軍の特殊作戦機MC130Jが慶良間諸島周辺で低空飛行を行った。今年の1月6日にも同機5機が編隊を組んで低空飛行訓練を実施している。

 今月に入って、国頭村辺戸岬周辺でも、同型機の低空飛行訓練が確認されている。

 慶良間周辺も辺戸岬周辺も風光明媚(めいび)な観光地で、訓練空域にはなっていない。

 低空飛行訓練や基地外での訓練が常態化しつつある。県も県議会もその都度抗議し、訓練の中止を求めてきたが、事態は一向に改善されていない。

 最近、政府が決まって持ち出すのは、1999年日米合同委員会で交わされた「在日米軍による低空飛行訓練について」の合意事項である。

 在日米軍は、国際民間航空機関(ICAO)や日本の航空法によって規定された最低高度基準と同じ高度規制を行っている、と記されている。

 国内法に従った訓練だから問題はないというわけだが、この合意がくせものだ。

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 航空法は施行規則で、住宅密集地では建造物の上端から約300メートル、人家のない地域では150メートルを最低高度と定めている。

 ただし、日米地位協定の実施に伴う航空法特例法は、航空法に基づく高度規制が米軍機には適用されない、とうたっている。

 政府はこれまで、米軍の低空飛行訓練の法的な根拠としてこの特例法を持ち出すことが多かった。

 現状は、航空法特例法に基づく航空法の適用除外と、日米合同委員会で合意した航空法の基準適用が「併存」する形になっているのである。

 基準適用を強調し、訓練回数を増やす。そんな魂胆さえ感じられる。

 国内法の適用を法律に明記し、航空法特例法による適用除外を廃止するのが筋だ。

 「戦後レジーム(体制)」から脱却するためにも、時代が求める国際標準に合わせた改定が欠かせない。

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 米軍機による低空飛行訓練は、沖縄だけでなく全国各地で相次いでいる。

 政府は日米合意に基づく高度規制を強調するが、規制基準を守らずに超低空飛行訓練を実施した事例も明らかになっている。

 米軍が実際に国内法の基準に従っているかどうかの検証は行われていない。客観的な検証が必要だ。

 仮に基準に合致していたとしても、米軍機による低空飛行訓練の常態化は、住民生活への脅威であり、沖縄においては特に、負担が大きい。