[女性クライシス]

コロナ禍で退職を迫られたエミコさん。「不安だが、生活しないといけない」と話す=1日、沖縄本島内

 「辞めるか、続けるか。この場で決めてください」

 昨年5月下旬、沖縄県内のリゾートホテルでパートとして働いていたエミコさん(56)=仮名=は上司に呼び出され、決断を迫られた。「これまで文句も言わず、まじめに働いてきたのに。こんな切られ方をするなんて」。悔しさを隠せない。

 新型コロナウイルスの感染拡大で観光客は急速に減り、満室が続いていたホテルの稼働率は、20%にまで落ちた。エミコさんの仕事も3月から減り始め、緊急事態宣言中の5月には休業状態に。給料は激減し、10万円あった手取りは4月に5万円、5月には社会保険料を支払うとマイナスになった。休業手当ては一切なかった。

 上司の“面談”に選択の余地はなかった。「これ以上待っても仕事ないよ」。3人で迫られた。「あまりに突然でパニックになった」エミコさんはその場で離職票にサイン。「よく考えて決めればよかったけど、余裕がなかった」。

 夫は以前、勤務中に負ったけがが原因でまだ働けない。家計を支えていたエミコさんの収入はゼロになり、家賃やガス代の支払いは数カ月も滞った。同居の子どもたちにも援助を頼めず、生活保護申請も考えた。8月に失業手当の支給が始まり月8万円が手元に入るようになり、やっと一息つけるようになった。

 今年1月末、病院で清掃のパートが見つかった。8カ月ぶりの仕事。希望する時給より少ないが「働けるだけありがたい」。コロナに翻弄(ほんろう)された1年。エミコさんは「雇用の調整弁としていいように使われた」と痛感する。「落ち着いたらもっと安定した職に就きたい」と願っている。

 沖縄労働局のまとめによると、新型コロナの影響による解雇・雇い止めやその見込みは、12日時点で1681人に上る。非正規が898人と58・9%に当たり、卸売り・小売業や宿泊・飲食サービス業がより影響を受けている。

 県内の非正規労働者の割合は43・1%で全国で最も高く、そのうち女性が59・8%を占める。女性は卸売り・小売業、宿泊・飲食サービス業で多く働いており、感染拡大で打撃を受けた産業と一致する。(政経部・玉城日向子)

■孤立させない策必要 島村聡・沖縄大学地域研究所長

 非正規雇用の生活の苦しさが顕著に現れた。働き方の変化で、正規は「時差出勤や在宅勤務の増」の割合が高いのに対し、非正規は「就業時間の減」が高い。収入が8割以上減った割合は女性が高く、非正規率の高い女性の雇用環境の不安定さが際立った。コロナ禍はリーマンショックと違い、より中小零細の業者に影響が広がっている。自営業の人たちの苦しさも、今回の調査で裏付けられた。

 生活が苦しいほど政策に不満を持ちやすく、調査で生活の苦しさを感じている人ほど玉城デニー知事を評価しなかった結果は理解できる。だが、興味深いのは菅義偉政権の評価が生活の苦しさにかかわらず低いことだ。観光業の浮上を狙った「Go To事業」が生活が苦しくとも感染予防により命を大切にしたいと望む県民に受け入れられなかった結果である。

 困窮者に生活費を貸し付ける総合支援資金や緊急小口資金、家賃を補助する住宅確保給付金を継続的に給付すべきだ。「死にたいと思った」と答えた人がいたが、何より自死を防がないといけない。先の見えない状況だからこそ、しばらくでも不安を感じずにいられる状況にしてほしい。孤立させない策をもっと考えなければいけない。(談)