タイムス×クロス 樋口耕太郎のオキナワ・ニューメディア

ドナルド・トランプという目覚まし時計 樋口耕太郎

2016年11月13日 07:27
米軍機

 

巨大ショッピングモールとテナント


 例えて言えば、戦後の日本経済は、アメリカという巨大ショッピングモールの中に、とても良い条件で出店を許されたテナントのようなものだ。どれだけ劣悪な商品を売っても退去させられずに優良スペースを提供されてきた。はじめはろくな商品も作れず、顧客のニーズも理解してなかったために苦労を重ねたが、やがて持ち前の勤勉さを発揮して、顧客の心をつかみ大いに儲けた。経済的に豊かになると誰もが勘違いをするものだが、巨大ショッピングモールの付加価値はテナントが販売する商品以上のものだ。いかにしてモールに大量の人をひきつけるのか、そのためにどのようにブランドを構築して広告するか、建物や交通や土木を含めどのようなインフラを整備するか、そしてどのようにしてテナントを集め育てるかにかかっている。

 この付加価値を生み出すことができてこそ、真の事業と言える。そのためには、創造的でなければならないし、失敗を重ねなければならないし、異なる人を受け入れなければならない。それらが巨大モールを開発した事業家と単なるテナントの違いだ。日本がどれだけ「経済的」に成功しても、大きい意味で「事業」に成功したとは言えないし、自律的な社会経済を生み出したとも言えない。

 また、批判を承知で申し上げれば、沖縄(あるいは日本の地方経済一般)は、アメリカという巨大ショッピングモールに入居している日本というショップに、住み込みで働いている従業員のようなものだ。モールで販売できる商品を自分で作ることができないので、ショップに労働力を提供するしかないのだが、それと同等かそれ以上の住環境と食費をショップに負担してもらっている。来月のシフトはどうなるのか、賄いのメニューがどうなるのか、いつも不安に感じているし、ショップの経営方針に口出しができないから、賄いのおかずに不満があっても、黙って働くしかないと感じている。そして最悪なことに、そもそも自分は住み込み労働くらいしかできないと、自分を諦めている。

ウェイクアップコール


 トランプについての先の私の推測が当たっているかどうかは分からないが、少なくとも、日米同盟の基本構造を、根幹のレベルから捉え直しそうな米国大統領は近年存在しなかった。そしてもし、日米同盟の枠組みに変化が生じれば、日本の政治と経済に最大級の影響が及ぶだろう。これまで代々続いてきた老舗のテナントが、大家である巨大モールから退去を求められるようなものだから、過去70年間、日本の誰も想定してこなかった水準の変化になると思う。そのような未来では、日本経済がいままで先送りしてきたことを、自らの力で切り開かなければならない。日本に対する戦後初めてのウェイクアップ(目覚まし)コールになる予感を感じさせる。

 同時に今後の沖縄では、基地負担の大幅な軽減が本格的に始動するかもしれない。これも沖縄にとって、異次元の変化をもたらす可能性がある。沖縄は長年活発な基地反対運動を行なってきたが、基地が本当になくなった後の準備をほとんどしてこなかったし、真剣に考えてもこなかったと言えるからだ。理不尽なショップに対して非人道的な住環境の改善を強く望んできたが、今後は自ら路面店を始めなければならないかもしれない。働き方から暮らし方から責任の所在から、これまでのすべてが一変するだろう。その意味で、米軍基地を沖縄から撤去するということの本当の意味が、本土復帰後44年目にして、現実味を持って議論されるようになるかもしれない。

 アメリカにおよそ15年ぶりに戻ってみて、その創造性と、自律性と、自由であることの感覚が蘇ってきた。格差をはじめ、多くの問題が生じているアメリカだが、それでも自由を愛する人たちのパワーがある。今なおアメリカが世界で最も影響力のある国であることには理由があると思う。

 アメリカのやり方に怒り、彼らの商品を真似て、あるいはお得な取引関係を探るのは、巨大モールのテナントとして、あるいはショップの従業員としては「合理的」だったかもしれない。しかしこのようなあり方に持続性はないと思う。トランプという目覚まし時計を機に、日本らしい、沖縄らしい、自分らしい生き方に挑戦してみるのはどうだろう。勇気のある人ほど、自律した人ほど、真の誇りを持つ人ほど頭を下げることができる。アメリカを支えている創造性と、自律性と、自分らしい自由な生き方から素直に学び、フェアで自律したパートナーシップを目指すことが、次世代の日米関係なのかもしれない。それを選択するのは私たち次第なのだ。
 

 

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