金武町立図書館が2011年から毎年発行している民話の絵本が、同図書館の貸し出しランキングで上位を誇る人気ぶりだ。絵本は子どもたちに、地域に伝わる民話に親しんでほしいと作られた。しまくとぅばにも触れてもらおうと、絵本の登場人物の会話は「金武くとぅば」で繰り広げられる。(北部報道部・西江千尋)

民話の絵本を読む児童たち=10月27日、金武町立図書館

金武町立図書館が発行した民話の絵本。「大城のタンメーとキジムナー」は「アナと雪の女王」に続き2015年絵本貸し出し2位=日、同図書館

民話の絵本を読む児童たち=10月27日、金武町立図書館 金武町立図書館が発行した民話の絵本。「大城のタンメーとキジムナー」は「アナと雪の女王」に続き2015年絵本貸し出し2位=日、同図書館

 町教育委員会が1989年に発行した「金武町の民話と伝説」を基にし、これまでに5冊発行した。1冊目は屋嘉区に伝わる「屋嘉スグラー」。農民の子、スグラーが、首里から来た侍の無理難題に冷静に対応するという頓知話だ。

 侍に難題を言い渡され「チャースガヤー。サムレーヌユシ、チカンナーラ、クルサリガスラワカラン(どうしよう。お侍の言うことを聞かなかったら殺されるかもしれない)」と真っ青になるスグラーの父。一方のスグラーは侍に向かって「ヘーサリ、里主ヌメーサイ、ガンジューヤミセーンナー(お侍さん、お元気ですか)」とあいさつし、侍の調子を狂わせる。

 金武くとぅばのやりとりには、子どもたちでも分かるように標準語を添えた。金武くとぅばの指導は町民が担当した。金武くとぅばは区によって多少違いはあるが、タ行がサ行になるなどの特徴があるという。例えば豚の血の炒め物は「チーイリチャー」ではなく「シーイリチャー」、洋服は「チヌー」ではなく「シヌー」となる。「こんにちは」は「サービラー」だ。

 絵本の中でも「がんばれ」というせりふは「シバリヨー」となっている。

 2013年発行の「オランダ森(むい)とエーグ石」は、19世紀にペリーが来琉した時の話だ。金武に立ち寄ったペリー一行が、ポンプを使い、川から水をくみ上げた。住民は「アンゼー、デージ! ミジュガ、ヒラカチ、ナガリティ、イチュサ! デージナチュウタエッサァ!(大変だ! 水が坂を上がっていく。大変な人たちだ!)」と驚く。異国の技術を初めて見た住民の衝撃が、金武くとぅばで生き生きと伝わる。

 絵を担当した町出身のイラストレーター、伊芸まもるさん(38)は「オランダ森は小さいころによく遊んだ場所。今も子どもたちが遊ぶ場に、こんな歴史があるということを、絵本を通して親しんでほしい」と話す。

 絵本は子どもたちにも大人気。「オランダ森-」は13年度の絵本貸し出しランキングで1位、「大城のタンメーとキジムナー」は15年度に2位になった。

 金武小5年の矢部日葵(ひなた)さん(10)は「大城のタンメー-」がお気に入りだ。「タンメーがキジムナーにおならをかけて追い払うところがおもしろい」。家では祖父母が金武くとぅばで話すが、意味は分からないという。「絵本だと絵もあるし、意味も付いているから分かる」。金武くとぅばの部分を指でなぞりながら読んでいた。町教委社会教育課の金城明美係長は「絵本は子どもたちも親しみやすい。気軽に金武くとぅばに触れてくれたらうれしい」と期待した。

金武町立図書館が発行した民話の絵本。「大城のタンメーとキジムナー」は「アナと雪の女王」に続き2015年絵本貸し出し2位=10月25日、同図書館