長期間ひきこもり状態にある青年と必死に向きあっていた母親との面談の中で、親しい知人から「子どもをあまやかしているからひきこもるんだ。私ならもっと厳しく対応して直ぐにでも働かせる」と言われたと、涙ながらに話されたことがある。母親はショックを受け、知人に会うことを避けるようになり、近隣スーパーへの買い物も行けなくなった。

 「ひきこもり」は「状態」を指す言葉で「病名」ではない。そこにいたる要因は人によって様々である。厚生労働省による「ひきこもり」の定義の一部には、「様々な要因により長期に社会参加できていない状態」と書かれている。つまり親の育児だけが原因ではないのだ。私の印象でも、実に様々な要因が絡み合って青年は「ひきこもり」状態となっているように思う。

 県内の「ひきこもり」問題が深刻な点は、専門の相談窓口が少ないことである。「ひきこもり」状態の青年は自分から相談に行くことができない。そのため家族が相談窓口を探すことになる。必死に医療や福祉の窓口を訪ねるが「本人を連れて来てください」と返されてしまう場合もあり、そうなると家族としては絶望するしかない。

 青年が「学校に行けなくなる」「働けなくなる」、そして外出できなくなりひきこもるまでには、その人なりの理由がある。ある青年は小学校の低学年からクラスメートと上手く馴染めなかったと言う。ある青年はいじめが原因と言う。その原因は様々で複雑に絡みあっており、青年自身も何が原因か特定できないことが多いのだ。青年達はひきこもりながら必死に原因を考える。「なぜ自分は学校にいけないのか?」「働けないのか?」「外出できないのか?」……。自問自答し社会参加できない自分を責め、そして動けない自分に絶望する。家族も青年に対し「このままでどうするの?」と働きかけるが、しかし青年自身が一番その問いを自分に向かってぶつけているのだ。そして状態が変わらないストレスから、ある青年は親に対して攻撃的になり、ある青年は親に迷惑をかけていると自分を責め続ける。青年も家族も必死に「ひきこもり」状態からの脱却を図ろうと苦しんでいる。

 この問題は家族だけで解決することは難しい。青年や家族を社会孤立させないためにも、この問題への適切な対応方法を知っていただくことが大切である。そして家族も孤立しないために、親の会や専門の相談機関に繋がることが問題解決の第一歩である。

 先日、私が働く事業所へ大学生が見学に来たが、そこで元気に活動する元・ひきこもり青年達の姿を見て驚いていた。青年への支援が適切に行われれば、多くの人たちが「ひきこもり」状態から脱出することが出来ると私は考えている。ただしこの問題への支援は時間と手間がかかり、もちろん我々の団体だけで対応するにも限界がある。そのためにも、この問題への適切な対応が出来る相談窓口が増え、社会システムの中で青年達への支援が行えるようになることが重要だと考えている。