すったもんだの末に、ふたを開けてみたら、やはりこの人だった。だが、ここに至る迷走ぶりは、あまりにも度を越していた。

 東京五輪・パラリンピック組織委員会は、女性蔑視発言で引責辞任した森喜朗前会長の後任に、橋本聖子五輪相を充てることを正式に決めた。 大会本番まで5カ月余り。

3月25日に福島県をスタートする聖火リレーまであと1カ月とちょっと。

 コロナ禍と女性蔑視発言を巡るドタバタ劇のために「東京2020」への期待は急速にしぼんでしまった。

 森氏の発言に抗議し、聖火リレーの参加取りやめやボランティアの辞退が相次いだ。

 引責辞任した当の本人が密室で川淵三郎氏を後継に指名しようとしたことが、国内外から批判を浴び、混乱に拍車をかけた。

 後任選びにあたって「透明性」の確保が重視されたのは、こうした背景があったからだ。

 実際はどうだったか。候補者を選ぶ「候補者検討委員会」の委員は正式には公表されず、会議も非公開。選考過程の透明性が確保されたとは言いがたい。

 官邸サイドから伝わってきた「女性で、若い人」が会長に選ばれたことで、政府の関与が疑われ、最初から結果が明らかな出来レースの印象が残った。

 橋本氏は規定に基づいて五輪相を辞め、会長職に専念する。

 限られた時間の中でオリンピックの機運を盛り上げていくのは容易でない。

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 今回の騒動は、二つの点で日本社会の現状を浮かび上がらせた。

 組織委員会の会長が、オリンピック憲章にある「男女平等」の理念を理解せず、「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」「規制しないとなかなか終わらない」「組織委の女性たちはわきまえておられる」などと語った。

 古い価値観や古い政治体質は森氏だけではなかった。

 二階俊博自民党幹事長は、ボランティア辞退が相次いでいることについて「だめなら募集して補充すればいい」と発言し、反発を招いた。

 島根県の丸山達也知事が、聖火リレーの中止検討を表明したことについて自民党・竹下派の竹下亘会長は「注意しなければいけない」と苦言を呈した。

 長老支配を印象づけるような発言、ボスが支配するムラ社会的な空気が、あぶりだされたのである。

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 1万人を超える選手の安全確保や、ボランティア、スポンサーの信頼回復など、橋本新会長が取り組むべき課題は多い。

 オリンピック・パラリンピックの成功だけでなく、日本社会全体に突き付けられている課題も見えてきた。

 「ジェンダー平等」の理念を仕事や生活の場でどのように実現していくか。

 議論のない組織をいかに活性化していくか。多様性をどのように確保していくか。

 今回の騒動を五輪の話だけに終わらせず、社会変革への第一歩にしたい。