総務省幹部が放送事業会社に勤める菅義偉首相の長男らから接待を受けていた問題で、同省は幹部2人を事実上更迭する人事を発表した。

 更迭された一人、秋本芳徳情報流通行政局長は当初国会で、接待の際、衛星放送についてのやりとりがあったかの「記憶はない」と答弁。接待時のものとされる音声が公表されその一部を自らの声と認めた後も、衛星放送に絡む発言は「記憶にない」と主張していた。

 19日の衆院予算委員会で秋本氏は一転、やりとりを認めた上で「私の記憶力不足と不適切な発言があったという点は反省している」と述べた。あくまで当初の説明と食い違いはないとの強弁だ。

 さらに秋本氏は、長男が国家公務員倫理規程に定める「利害関係者」に当たるとの認識も示した。許認可権限を持つ官僚が、許認可を受ける側の関係者と会食を繰り返していたということだ。接待により放送行政がゆがめられたとの疑念はさらに強まった。

 同時に、政府側による国会での「虚偽答弁」がまたも繰り返されたことになる。

 森友学園問題では、当時の財務省理財局長らが国会で、交渉記録が「ない」などとする虚偽答弁を計139回繰り返した。加計学園問題では、元首相秘書官が「記憶にない」とした地元自治体担当者らとの面会が明らかになった。

 官僚らの間に、国民に真摯(しんし)に説明することを避け、政権中枢への忖度(そんたく)と強弁を繰り返す思考がまん延している。国会と国民を軽んじるこうした姿勢は断じて容認できない。

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 長男の勤務する会社の元社長は、菅首相自身も政治献金を受け数回会食した間柄だ。

 「利害関係者」であるにもかかわらず接待に応じた官僚らに、首相側への忖度がなかったとは考えにくい。総務省は今後接待を受けた他の幹部も含め懲戒処分を検討するというが、首相も紛れもなく当事者であり、接待を受けた官僚のみを更迭や処分して済む問題ではない。

 だが首相は、長男を「別人格」と強調した上で、「国民から疑念を抱かれる行動は控えるべきだ」との一般論で追及をかわした。極めて不誠実な対応だ。

 接待に関する「虚偽答弁」にもかかわらず、政府は放送行政のゆがみはなかったとの答弁を撤回していない。ならば首相が率先して説明し国民の疑念を晴らすべきだ。野党が要求する長男らの国会招致や、第三者委員会による調査はその一助となるはずだ。

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 新型コロナウイルス対応で国民に自粛を求める中、深夜に飲食した与党5議員が相次ぎ議員辞職・離党した。「政治とカネ」を巡る汚職や公選法違反事件などの不祥事も続いている。国民の目には、衆参で圧倒的多数を占める巨大与党の「おごり」に映る。

 今回の幹部更迭も、予算案や放送法改正案審議などへの影響を最小限にしたいとの思惑とされ、接待問題との関連を政府は公式には認めていない。22日には総務省の再調査結果が報告されるが、それで幕引きを図るなら「おごり」への厳しい目は続くだろう。