木村草太の憲法の新手

[木村草太の憲法の新手](146)退学停学の理由にならず 校則の有効性 弁護士に相談し解決を 

2021年2月21日 10:02

 校則を巡る重要な訴訟が相次いでいる。東京の私立高校では、男女交際を禁止する校則に違反したとして、生徒が自主退学を勧告された。大学への推薦は取り消され、卒業単位を認めない旨を告げられ、転校を余儀なくされたという。生徒は裁判で、退学勧告の違法を主張しており、2月から弁論が始まっている。

 2月16日には、大阪の公立高校の髪染め禁止校則に関する判決が出た。この事案では、学校が校則で「パーマ・染色・脱色・エクステ」を禁じており、黒染めの指導をしていたという。また、指導に耐えかねた生徒が不登校になると、学校は、教室に生徒の席を置かず、学級名簿に名前を載せないなどの措置をとった。大阪地裁は、不登校後の排除措置を違法とする一方、黒染め指導は強制ではなく、違法性はないとした。

 こうした訴訟が起きると、「校則の有効性」に注目が集まる。しかし、校則それ自体に強制力はなく、その有効性の判断に大きな意味はない。

 まず、教員が、生徒に有形力を行使できるのは、暴力の制止や、授業妨害への対処など、正当防衛・緊急避難などで正当化できる場合に限られる。教員が生徒の身体を無理やり押さえ強制的に髪染め等をすれば、犯罪や不法行為となる可能性が高い。

 また、校則違反それ自体は、退学・停学といった処分理由にならない。例えば、東京高裁判決平成4(1992)年3月19日は、校則違反のバイク免許取得・乗車を理由とした退学処分について、当該生徒が「普段の学校生活上で問題のある生徒とはされていなかった」などの理由で、厳しすぎるものとして無効と判断した。他方、最高裁判決平成8(1996)年7月18日は、校則違反等を理由とする退学処分を適法としたが、この退学処分は、校則違反だけでなく、教員への侮辱や就学態度の悪さを加味したものだった。

 裁判所のこうした態度を反映し、学校には、校則違反に対して直接強制や退学・停学の処分を避ける傾向がある。その代わり、口頭でしつこく説き伏せたり、「謹慎」の名目で教室入室や行事参加を認めなかったりする。大阪髪染め校則の事案でも、学校は、授業や修学旅行への参加を拒んだとされる。

 こうなると、生徒の側が根負けし、「自主的に」髪を染めたり、退学したりすることが多い。その後に訴訟を起こしても、学校側は「校則は強制ではなかった」と責任を免れようとする。「自主的でなかったこと」の証明は難しく、裁判所は「強制でないから違法でない」という判決を出す傾向がある。しかし、生徒から見れば、後から「強制でないから適法」と言われても、納得できるはずもない。

 こうした結末を回避したいなら、校則違反の指導段階で弁護士に相談するのが最善だろう。学校側は、あくまで「自主的」という形式を作りたいので、弁護士を通じて、どこまで強制するつもりかを確認すれば、強いことは言い出せないはずだ。万が一、強制だと言われた場合は、学校側に「髪染め請求訴訟」等の提起を促すべきだろう。この訴訟で学校が勝つのは容易ではなく、「泣き寝入り」する学校も多いのではないか。

 校則問題は、早期の弁護士対応で解決していくべきだ。(東京都立大教授、憲法学者)=第1、第3日曜日に掲載します。

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